人類の横っ面を叩く台風

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2年ぶりに上陸した台風18号。朝からどの放送局でも、ヘルメットをかぶり暴風雨に打たれるレポーターが実況中継をしている。岸壁をバックに「まもなく満潮になります。高潮に注意してください!」と叫ぶ本人がいちばん危険だろうと思うが、昔から変わらない報道風景。お決まりのアドレナリン全開状態は、2ちゃんねる風に言えばまるで「祭り」だ。

AM8:32。雨は止んだ様子なので窓を開け、強風に揺られるパームツリーを撮ってみた。猫じゃらしと勘違いしたのか、隣で与六も身を乗り出し、今にも木々に跳びかかりそう。慌てて窓を閉めた。

思えば子供の頃は、もっと多くの台風が上陸したものだ。一番怖かったのは家の裏手の川があふれて床下浸水した時、小学生だった私は祖母と2人で留守番をしていた。注意を呼びかける防災スピーカーにパニック状態。祖母も生まれて初めての経験らしい。

床上浸水になる前に、まずは家財を守らなくては。父が大事にしているコンポーネントステレオのアンプを、座卓の上に移動させようとした。2人でうんしょと担いで事を成し遂げると、ちょっと待てよ、何かおかしい。冷静になって見おろすと、アンプが乗っていた台よりも座卓の方が低いのだ。幸いにも水が引いて避難せずに済んだが、火事場で慌てて枕を持って逃げる人の心理がよく分かった。

台風18号は北上して新潟付近へ。逗子では青空が広がって、強烈な日差しが照り付けている。鳥たちの鳴き声も戻ってきた。朝方までの嵐が嘘のようだが、テレビでは刻々と明らかになっていく被害状況を伝えている。愛知県の豊川橋で突風にあおられ、横転した4トントラックの運転手は「台風を軽く見ていた。前日のうちに出発していれば、こんなことにならずに済んだのに」と悔やんでいる。

文明に浸りきった人類の横っ面をひっぱたく台風。安全神話のパラドックス。身を守る術を本能で知っている動物たちに比べたら、人間はどんな大都会にいようと、大自然の中では一番ちっぽけな存在である。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    確かに、人間が「そこにある危機」に鈍感になっている様に思うなぁ・・・。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    3万人の足に影響したという交通機関の乱れは酷かったですね。
    強風にあおられて揺れる電車の中で、2時間も閉じ込められた乗客たちがお気の毒でした。台風が襲ってきている最中でも、危険をおかして出社しなくちゃいけないのか・・。会社側も災害対策マニュアルを決めておくべきかと思います。

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