石蕗(つわぶき)の花が咲きはじめると冬の入口が近い。日ごとに気温は下がっていくけれど、コートを着るにはまだ早いこの時期が私は大好き。カシミアの真っ赤な大判ストールのお出ましとなる。
実家に暮らしていた頃、書き上げた原稿をバックに放り込んで、仕事先に向かうのはいつもギリギリの時刻。今日は寒いからと家に戻る暇はないので、活用アイテムとして大判ストールを持ち歩くことにしていた。
ちょうど今頃だったと思う。森山良子さんとディナーショーの打ち合わせが終わり、ビルの外に出るとピューピューと木枯らしが吹いている。薄手のセーターにストールを羽織っただけの私に、「おだゆ、寒くないの?」と良子さんが心配してくれた。「ぜーんぜん」と応えながら本当は震えていたのだけど、おしゃれのためなら痩せ我慢するのが若さだったと思う。
ところが昨年あたりから寒さへの耐性が弱くなってきた。これまでババシャツなど敵だと思っていたのが、通販サイトで保温下着を物色する軟弱さ。デザインよりも機能優先で、肌色のモモヒキだって履いてしまう。お年寄りがミノムシみたいに重ね着している理由を、年齢と共に実感するようになった。
衣替えしたクローゼットを見回しながら、さあ今日の外出はどうしたものか。赤いストールだけじゃ心許なく、ローゲージのざっくりカーディガンを選ぶ私に、忠告の声が聞こえてくる。それは飲み友達だった大御所スタイリストのTさん。以前「ノースリーブは大人の勝負服」の日記に書いた通り、真冬でもコートの下はノースリーブを着ている女性だった。バリ島で焼いた肌がなめらかに光って、不思議と寒そうには見えない。
「寒くたってタクシーに乗るまでの我慢よ」
「あなた、もっと肌を見せて色気を出しなさい」
いつまでも「女」でいることを主張しながら、彼女は今年この世を去ってしまった。
そろそろ美容院に行かなくちゃね。背中があいたワンピースが着れるよう、エステにも行かなくちゃね。いつの間にか田舎臭くなった自分を嗜めながら独り言。久々に書店のファッション誌売り場を見ようと思う晩秋である。
コメント
マフラーとかストール(ん?同じかな?)って結構、重宝しますよね(^^)
最近になって私は三本のマフラーを買い、洋服に合わせて活用してます。(全て千円代でピンク、ホワイト、ブルー系のチェック)安くてデザインもお洒落なものが沢山うってました。
今の季節の体温調節も出来るし、お洒落の一つにもなるし・・・そして何より首元を暖めると風邪も引きにくくなりますよね。
やせ我慢と言えば、去年の秋に飲み会の歳にショーパン、半袖のフリルブラウス、コートというファッションで出掛けました。全て秋冬物でしたが、風邪ひいてしまいました。やはり、長袖と重ね着が鉄則でしょうか?
marie様
喉を冷気に晒すと風邪を引くことを、ついこの間まで私は知りませんでした(^^;
マフラーやストールはお洒落のためにあると思っていたのが大間違い。健康のためにもっと活用すべきアイテムなのですね。