FJFJから始めたパソコン

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パソコン初心者の友人から、困った声で電話があった。「あのさ、フィレンツェってどう押せばいいの?」。受話器を肩と顎のあいだに挟み、キーボードで再現しながら答える。「全角キーにして、FIRENNTULE。ひらがなで表示されてたらスペースキーかF7キーを押してね」。
やがて「出来た!」の歓声。その後に続いたのは「上に並んでるF1、F2・・ってキーは何?」である。

電話を切ったあと、思い出したのはNECが1996年に制作した縦書きのマニュアル。なんと直木賞作家の海老沢泰久氏に依頼して、「読み物」としての初心者向けガイド本を作ったのだ。題して「これならわかる パソコンが動く」。当時を振り返ると、前年にはマイクロソフトがWindows 95日本語版を発売し、日本中がにわかにパソコンに活気付いたころである。

海老沢氏はF1レースに関する小説を発表するなどメカニック用語には詳しかったようだが、パソコンもワープロも触ったことがないゼロスタート。従ってガイド本はパソコンが梱包された箱を開くところから始まっている。似たり寄ったりのケーブルをどこに繋ぐのか、手順を書きとめていったという。

文字入力の練習に用いた単語は「北別府修一」。この綴りには清音、拗音、濁音、半濁音、促音、撥音の全てが含まれている。文章作成練習に関しても、自著から面白い文章を抜き出して、電車の中で読んでも楽しいマニュアルに仕上げたそうだ。

物書きが制作する教則本。実は私もF通の講習会用に2冊書いたことがある。CGIプログラミング用語であるPerlの基礎編と、データベースOracleとの連携編。作詞や構成台本書き以外にも、パソコン使いの趣味が極まって講師にまで発展した経緯があるが、参考として渡されたカタカナ用語集はどうにも腑に落ちないものであった。例として挙げると・・
○ データ × データー
○ サーバ × サーバー
○ ユーザ × ユーザー

英語の発音と違うと思いながら、しきたりに従う心地悪さ。自由に書かせてくれたらもっと面白い教則本ができるのにと、誰かから依頼が来ないかなと今でもひそかに願っている。

思えば680×0シリーズのMacintoshから付き合い始めたパソコン。FJFJから始まるブラインドタッチを練習した日々は、懐かしくも遠い時代になりにけりである。

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