花冷えという言葉を実感する寒さが続いている。昨日はグランドプリンス高輪での観桜会。春夏ジャケットの上に綿コートで震える私を、「後ろの枝垂れ桜がきれいだよ~、鼻水出すなよ~」と友人が笑いながらカメラに収めてくれた。その後ワインをあおっても凍えた顔は解消されず、お開き後は早々に中庭を抜け、品川駅に向かって歩き出す。
前を歩いていたのは、仕事帰りに寄ったのだろう、言葉少なげに夜桜を見上げる若いカップル。ぎこちない肩と肩の距離からして、まだ恋愛関係には至ってないらしい。それでも2人で桜を見にきたという行為は、お互いの心がほんのりと色づいたはずだ。
今にも恋が始まりそうな瞬間から、女は明日の鏡が百倍も楽しみになる。やがて桜の満開が過ぎ、花吹雪を散らすころには、彼女の凍えた指は彼のポケットの中でぬくもりを貰っていることだろう。
始まる恋もあれば、終わる恋もある。おぼろげな昔の彼氏たちを思い出しながら桜坂を下っていくと、ポツポツと灯りのともったホテルパシフィック東京が現れた。まだ40年の歴史しかないのに、競争に負けて時代遅れになっていくホテル。
「ここも閉まっちゃうんだよね」
いつの間にか後ろを歩いていたパーティー仲間の声がした。もうすぐ息子に会社を譲るという白い髪の友人は、バスの時刻を確かめてから、閉鎖された京品ホテル辺りを散歩してくると手を振った。
始まる恋と、終わっていくホテルと、ノスタルジックな人生。また来年同じ桜が咲く頃には、変遷の激しい街に、何が残って何が消えていることだろう。
コメント
また集まって、中目黒で花見したいですねぇ。。。
桜、特に「夜桜」は私にとって思い出深いものがあります。
まだ、23ぐらいの頃の話ですがとても好きな人がいました。
私から告白し、付き合いだしました。
初めてのデートが夜桜を見に行ったことでした。
夜桜・・・突然キスされました。
けれども、その当時彼には彼女が居たんです。
ショックでした。けれどもお互い感情を押さえらずに、とにかく会える限り会いました。もちろん一線も超えてしまいました。
若い時って第二の女でもいいと思ってしまうところがありますよね。
marie様
禁断の恋、忍ぶ恋ですね。私にも思い出がありますが、第二の女でい続けることに疲れ、新しい恋人ができたふりをして別れました。人の気持ちをいたぶったことに後悔しつつ、別れを告げた時の彼の表情は今でも忘れられません。
こまちゃん
目黒川の桜、懐かしいですね。久しく会ってない皆さんの顔も懐かしい。居酒屋の座敷で、また日本酒など飲みたいものです。