半袖が肌に馴染んできた6月の材木座海岸。134号線を走る車からは見えなくても、海水浴客を迎える夏の準備は着々と進んでいる。砂浜に停めたトラックからは木材が降ろされ、海の家作りが始まった。肋骨みたいな支柱が並び、職人たちが黙々と家の形を組み立てていく。
逗子マリーナに近い側には、大学生たちが集まってミーティング。たぶん関東学院大学の設計チームに違いない。ビーチプロジェクトと題打って、夏ごとに不思議な形のビーチハウス”Villa del Sol by Bambini”を自分たちの手で建てているのだ。
さて去年はどんなデザインだったっけ。藤の椅子に座って、冷えたジンのカクテルをお代わりした午後。私の隣に座っている人も夏ごとに違っていたなあと、短い恋の記憶を辿る。水面を走るウィンドサーフィンの帆や、グライダー飛行をするトンビの鳴き声は鮮やかに思い出すのに、恋人たちの顔や声はフェイドアウトしてしまった。
子どもの頃からいつも近くにあった海。「こっちへおいでよ」と友だちの呼ぶ声。なのに足が立つ所までしか泳げなくて、大きな波が来ると慌てて引き返した。恋も同じこと。勇気を出して波を乗り越えたら、一生のパートナーを得ていたかもしれないのに、そこまで行けない。
砂浜に腰を下ろし、家族連れやカップルたちにレンズを向けた。みんな数週間後の海開きを待ちわびて、繰り返し寄せる波を飽きもせずに見つめている。
一年に一度しかない夏。残りの人生にあと幾つの夏がやってくるのだろう。今年こそ私も、レンズの向こう側の景色に入らなくちゃね。辛抱強く波を待っていたサーファーが、立ち上がって眩しいしぶきを上げた。
コメント
夏の風、海の香りと波の乗って…
こっちにおいで。
町は逗子の素浪人様
与六に留守番をさせるのが忍びなくて、どこへも行けない身となりました。婿の募集でもしようかな。
海ですか。
我が家からは約一時間の距離です。
たまには海へのドライブもいいですよね。
夏の恋ですか・・・。夏に始まり、夏に終わった恋も幾つかありました。
夏って誘惑と言う恋が多かったかもしれません。
「どこかへ行こう」「楽しいからおいで」「俺と付き合って」「君に一目惚れした」「結婚しよう」・・・とナンパでこれだけの甘い言葉を言えるってある意味すごいですよね(笑)
やはり、若さだけで男も女もそれだけ自信があるのかもしれませんね
marie様
今日は渋谷でたまたま、若い男の子が学生風の女の子をナンパしてるのが目に入っちゃったんですよ。「お茶奢るからさ~」「えーっ、どうしよっかなあ~」
考えてるふりをしながら、女の子の声は嬉しさに弾んでました。若いって、いいですぇ。