大都会にひそむ廃墟ビル

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先日、六本木ヒルズクラブで、ある団体のパーティーがあった。そこそこの食事とワイン、適度にジョークを交えた大人の会話、曇り空に溶け込む夜景を楽しんで、お開きは午後8時半。そのまま帰るには中途半端な時間である。

六本木ヒルズクラブからの夜景
六本木ヒルズ森タワー

そうだ、あの店に行こう。思い立ったのは西麻布の裏通りにある友人のバー。福山雅治似のマスターに会いに、東京に住んでいた頃は足しげく通ったものだ。六本木通りを渡って下り、約2年ぶりの道を歩いていくと、記憶を覆す建物にぶつかった。

何が起こったのか、まるで幽霊ビル。私が知っているメンテルス六本木は6階までがビジネスホテル、7階以上が分譲マンションで、父もワンルームのオーナーだった。数年前に売却するまでは、賃借人が変わる度にメンテナンスに時々訪れていたのだが、まさか廃墟になっていようとは・・。レストランだった1階は落書きだらけの壁。入り口は薄明るいけれど人の気配はなし。裏に回ってビルを見上げると、2つばかり窓に灯りが点いている。

メンテルス六本木1
メンテルス六本木2
メンテルス六本木3

数分後、友人の店のカウンターに落ち着き、事情を尋ねた。昭和54年築の老朽化したビルは建て直しが決まったのに、2部屋と1店舗だけ住人が退去しないのだという。
「困るんですよね、あんな怖いビルがあると。お客さんがこの界隈に近づかなくて」
愚痴をこぼすマスターの言い分はもっともで、確かにメンテルスの周りは人影が見えず、街の活気が消えていた。

大理石のカウンターでジンリッキーを1杯、テキーラのショットを1杯飲む間に、それでもポツポツとお客が入ってくる。しかし聴こえてくる会話には、西麻布の過去の栄光を語る内容しかない。いたたまれずにチェックを頼むと、えーっ、5,000円!?
「またちょくちょく顔を出して下さいよ」に愛想笑いを返したけれど、次に来た時には店があるかどうかだ。

西麻布のバー

逗子に戻り、行きつけのバーでその話をすると「うちなら2,000円だよ。もっといい酒でね」と、マスターが得意顔。いつの間にかカウンターを埋めた常連たちが、今日の出来事を面白おかしく披露する。笑いが端から端まで伝染する。

生きている街、死んでいく街。まるで人間界テーマパークのアトラクションを2つ、体験したような夜だった。

コメント

  1. marie より:

    大都会でもこの不況の影響を受けるビルがあるんですね。
    時々、テレビで不況を感じさせない業界(セレブとか)の取材番組をやっている時がありますよね?
    リストラなどの影響を受けている中、ある場所にはカネがあるんだなぁと溜息ものです。
    汚い言い方ですみません。
    事業の成功と失敗の分かれ目は「経営力と運」なんでしょうけど、どうして世の中はこうも不公平なんだろうなぁと思う事があります。
    無職でも税金は前年度の収入から見てガッポリ取られるし・・・。
    働いている時は給与天引きで会社が引き落としてくれてたのであまり実感がなかったのですが、今更ながらビックリしています。
    お金は大事だなぁとつくづく感じています。

  2. yuris22 より:

    セレブと言われる人たちを見てると、韓流ドラマみたいな世界は本当にあると思います。
    お金のあるところにはお金持ちや美男美女が集まり、一声かければ「面白そうね」と資本も集まります。
    彼らは「引き寄せの法則」の典型なんでしょうね。

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