話は2週間前に戻る。小坪の天王祭という氏神様の夏祭りで、行きつけの喫茶店に寄った時のことだ。蚊取り線香に守られたオープンカフェは、椅子を外に向けてのマンウォッチングが楽しい。子供を肩車したお父さん、金魚のビニール袋を下げた女子高生、法被姿で駆けていく小学生たち。いつもは閑散とした商店街を、はしゃぐ声たちが行き交っている。
「今日は見たことのない人が多いよね」とコーヒーをお代わりした時、「幸福実現党」と書かれた青いのぼり旗を持ったグループが目に入った。同じ青色のユニフォームを着た女性と、白いスーツ姿の女性とが向かいの食料品店に入っていく。彼女たちがレジに並んで飲み物を買うあいだ、店の前ではチラシの束を抱えたもう1人の女性が動き出した。
彼女は通行人にチラシを押しつけながら「私たちは消費税をゼロにします!」と叫ぶ。狐つきのような目つきが不気味で、向かいの喫茶店から見ている私たち常連は、来るなよ来るなよと心の中で願っていた。
すると目線はこちらへ。「入ってもいいですか?」さえ聞かずに、いきなり店に飛び込んでくる。お客たちにチラシを配り、店のマダムにも「お願いします!」と手渡した。
そのときのマダムのきっぱりとした忠告が男前だ。
「今日は何の日だかご存知ですよね。町内のお祭りというリベラルな行事に、政党のビラ撒きなんてお止めになったほうがいいんじゃないですか?かえって反感を持たれますよ」。
謝りもぜずに、無言で立ち去った彼女たち。ちょっと離れた場所で性懲りもなく宣伝行動を繰り返しているのには呆れ果てた。
地元の住職でさえTシャツ姿で一町民となる夏祭り。神奈川4区の議員候補たちが顔を見せに来ても、顔見知りたちと呑んで雑談するだけで、政治の話は一切持ち込まない。そこへ宗教色丸出しの政党が旗を立て、ズカズカと土足で乗り込んでくるのはアンフェアすぎる。
今朝の新聞には、『幸福の科学』を支持母体とする政治団体『幸福実現党』から、大川隆法総裁が衆院選に出馬するという記事が載っていた。ホームページには「消費税、相続税、贈与税を全廃します」と夢のようなマニフェストを掲げている。代わる財源として「日経平均株価を2万円台に乗せます」とは、信仰の力で奇跡を起こすつもりだろうか。
強気な政教一致。麻原彰晃が出馬した1990年2月の衆院選がオーバーラップしてならない。それは失われた10年、悪夢のようなバブル崩壊が始まった年であった。
コメント
自由や権利を履き違えている人、いますよね。
人は人と隣り合って生きているのに。
何党だからではなく、
裏付と効果の期待できる政策かどうかですね。
ちゃんと国民は見抜いていけると信じたいです。
それにしても場所や時間をわきまえない
名前を連呼するだけの選挙運動は
止めてもらいたいですね。街の公害です。
早くインターネット解禁にすればいいのに。
絵に描いた「粋」と「野暮」。それとも「KY」か。
たけぞう様
組織に属すると、人間は「個」の感情を失くしてしまうように思えます。制約に守られて縛られている姿は、外から見れば操り人形にしか見えません。
インターネットでの投票は、出不精な私も待ち望んでいます。若者たちの投票数が増えて、国民が望む本来の政治が見えるような気がします。
しかし個人を特定するための電子証明書の取得など、面倒な手続きをどう簡潔化していくかが課題でしょうね。お役所仕事のことですから、あと何十年後の実現かもしれません。
的は逗子の素浪人様
KYどころか「いっちゃってる」。つまりは洗脳が彼女たちの表情に現れていました。
選挙活動なら普通は笑顔をふりまくはずでしょう?彼女たちの目はオドオドと宙を見据え、決して笑っていないのです。まるでロボットのようでした。