事業仕分けで消える子供たちの家

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こどもの歌づくりをライフワークとしている私のもとに、胸が熱くなるメールが届いた。杉並区立南伊豆健康学園のOB・OG・保護者で作られている「みなみいずの会」からのメールである。この学園は全寮制小学校として静岡県南伊豆町にあり、ぜんそく、肥満、虚弱などの健康課題を抱えた病虚弱児たちが転地療養しながら学んでいる。ところが昨年11月に行われた杉並区の事業仕分けにより、来年度いっぱいで廃校が決定したというのだ。

 

ついては学園の素晴らしさ、存在自体を周知してもらうため、ホームページや展示会などを企画しているという。その一環として園児の歌う『赤いやねの家』を使ったビデオを作りたいのだそうだ。メールの一部を抜粋させていただく。

「親元を離れ、寮生活を送る園児たちにとって学園は第二の『家』です。ですから、卒園生にとっては『赤いやねの家』は、まさに、彼らの気持ちをそのまま歌った歌なのです。昨年は、南伊豆町の音楽会でこの歌を歌い、大変好評でした。また、毎年、卒園式前日のお別れ会で園児が歌ってくれますが、保護者の私どもは、この歌を聞くと感極まってしまいます。」

 

恥ずかしながら私はこの学園の名前さえ知らなかった。しかしYoutubeにアップされた健康学園ビデオを見たとたん、涙腺がゆるんだ。どんなハンデを背負っていようと、親元を離れて寂しかろうと、自然の中で逞しく成長していく子供たちが、眩しいほどに輝いていたからである。

 

学園歌を見てさらにビックリ。作詞が日本を代表する児童文学者の石森延男さん、作曲が「ちいさい秋みつけた」「めだかの学校」「夏の思い出」等の中田喜直さんだ。両巨匠の想いが寄せられた学園歌には、昭和の懐かしさが色あせずに顕在している。これを歌う子供たちの声も来年で終わりなのか。

 

南伊豆健康学園の仕分け結果についてネット検索してみると、不当であるとの意見が目立つ。子供たちが体質改善のみならず心の健康も取り戻し、学力にも自信がつくという効果が実証されているのに、たった数名の委員による審議で(しかも基本的な資料もなく)、廃止が宣言されてしまったという。

 

パフォーマンス化した事業仕分け。政府がばらまく子ども手当の代償に、失われていく子供たちの家。こんな矛盾した政策を誰が望んでいるのだろう。伝統をブチ壊すのは一瞬だが、失くした国民の信頼はそう簡単には取り戻せない。

コメント

  1. ハルク伊藤 より:

    実に淋しい出来事です。
    混沌とした世の中、善悪の基準や是か非かの判断すら見失いかねない昨今。憂うばかりです。
    当初、心より期待していた事業仕分けでしたが、「本来残さなければならないものを切り捨てる」そんな理不尽な事業仕分けでは、「期待していた我々国民がバカをみた」感じがしてなりません。
    憤りすら覚えます。

  2. yuris22 より:

    ハルク伊藤様

    理念を持たない民主党の体質なのか、人気取りで始めたことが全て壁にぶち当たります。本来なら外に見せないはずのお家騒動まで堂々とさらして不安を煽る。マニフェストは頓挫し、若者は職に就けず、デフレは悪化するのみ。
    国民の生活は実験台ではないのです。ゲームとは違ってリセットできないことを分かっているんでしょうか。

  3. muha より:

    少子化の波に沈んで行ってしまうのですね。プレハブ校舎世代には羨ましい限りの環境ですがやはり家族生活が成長に必須の様…両杖で脚の弱った妙齢の御母堂と恐らく…症の御令嬢の一場面を垣間見て先行きは見通せなくても今是一時を健気に暮らす精一杯の現実に浸るしかないのです。

  4. yuris22 より:

    muha様

    少子化にプラスして、校舎の耐震化に費用がかかるというのも一因だったようですが、何か代替案は見つからないのでしょうかね。マイノリティを見捨てていく政策のあり方は、殺伐とした未来を生む気がします。

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