推薦入学とカンニング事件

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学生時代、勉強にはおよそ興味がなかったボーイフレンドが、小さな紙にびっしりと文字を書き込んでいるのを見たことがある。「それ何?」と聞くと、「試験なんだよ、明日」。初めてカンニングペーパーを目の当たりにした思い出だ。

大学の入試問題がYahoo知恵袋に流出した事件。逮捕された予備校生には偽計業務妨害という容疑がかけられているが、果たしてこれを犯罪にしていいのか疑問を感じる。カンペ作りのようなローテク作業に夜を徹しなくても、空中を行き交う情報技術が発達した今は、ハイテクなカンニング手段は幾らでもあるだろう。最先端の知識とスキルを教える大学が、携帯投稿の可能性に気付かなかったこと自体、むしろ職務怠慢と言えるんじゃないだろうか。私立ならまだしも、国民の税金が投入されている国立大なら尚さらだ。

受験といえば、私は中学受験だけを体験した。しかし大学受験の大詰めを知らない。中高一貫お嬢様学校からの推薦により、美智子妃殿下が卒業されたお嬢様大学へ進んで、のほほんとした青春時代を過ごした。高校時代、成績は学年ベスト5に入るくらい勉学に励んでいたし、塾にも通い、外に向かって実力を試す集大成が大学受験であったはずなのに、ふらふらと推薦という安易な道を選んでしまったのだ。

早々に推薦が決まってから、クラスメイトの視線は冷たい。級長の選出をする黒板。私の名前の下に「正」の字が連なっていくのを眺めながら、クラスから弾かれてしまったことを悟った。推薦がズルだとは思わないが、学友たちと受験場へ向かうチャレンジの機会を逸してしまったことが、いまだに悔やまれて仕方ないのである。

国の少子化が進んで、最近は大学の定員確保のために行われているという推薦入学。定員割れを防ぐために、受験生たちへの入試問題も易しくなったという。だったら門戸を開放して誰でも受け入れ、進級や卒業のハードルを高くした方が良くないだろうか。カンニングの心配もなければ、授業料だって稼げるだろう。

逮捕された予備校生の釈放後が気にかかる。ネットを通して実名が出回り、マスコミにつけ回され、今後の大学入試は難しいかもしれない。肩を並べて「始めーっ!」の、公平であるべきチャレンジの時を逸してしまったのを、きっと一生後悔し続けるだろう。そして日本を担う若者が一人減る。

時代の変遷に立ち遅れている大学に、おとがめがあって然るべきと思う今回のハイテク・カンニング事件であった。

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