人は安易に助けられない

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NHKのにっぽん紀行「隊長は82歳~新潟・ライフセーバーたちの夏」を観た。新潟県の瀬波海岸で、82歳にして現役ライフセーバーである本間錦一さんの活躍を紹介していた。赤銅色に日焼けした顔、精悍な眼差し、たるみ一つない引き締まった身体・・、高年齢であることを全く感じさせない隊長である。

本間さんが特訓するのは、ライフセーバーのアルバイトに志願してきた37歳。建築業の仕事がないので、ひと夏の稼ぎを当てにしてきたものの、メタボなお腹と怠慢な動作は見るからに頼りない。

見張り台でボーッと座っている新人に、本間さんが指示を飛ばす。海水浴客が砂浜から海に流してしまったビーチボールを、泳いで回収してこいと言うのだ。ライフセーバーがそこまでやる理由は「事故の芽を未然に絶つ」ため。海水浴客が自分で取りに行って溺れたりしないよう、目配り気配りを欠かさない。

溺れている人を救助するのがどんなに危険であるか、本間さんは教え子たちに何度も話す。しがみつかれ、背中に食いこんだ爪の跡が1ヵ月消えないこともあったという。訓練を重ねながら、プロとしての自覚が芽生えてきた新人がしみじみと言った。
「人を助けるって、生半可じゃないなって思いましたね」

私たちは「助ける」という行為を、安易に考えていないだろうか。溺れる人間にワラを投げて、「助けた」と満悦感に浸っていないだろうか。生死の境にいる人間が何を必要としているか理解しているのだろうか。上から目線の偽善行為をしていないだろうか。

例えばお祭り騒ぎのチャリティーイベント。今年の「24時間テレビ 愛は地球を救う」では、イモトアヤコがマラソンに挑戦する。昨年はエド・はるみ、一昨年は萩本欽一。彼らは善意のボランティアのように見えるが、126キロを走る対価として数千万円のギャラを貰うという。これをチャリティーの目玉として応援することが、どうして地球を救うことに繋がるのか。

お笑いタレントたちが「頑張りました」と泣いてみせる間にも、「助ける」ことのプロたちは、自分たちの持ち場で黙々と仕事をこなしている。

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