詐欺師撃退の思い出

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新型インフルエンザの感染が拡大していく中で、ついに新手の振り込め詐欺まで登場した。長男を装った男から、「携帯の番号が変わった。新型インフルエンザにかかり少し声がおかしい」と電話があり、心配する父親に100万円振り込ませたという詐欺である。

振り込め詐欺防止対策が強化され、「私だったら大丈夫!」と言い切る人でも、ツボにはまると騙されてしまう。上記の事件では父親の年齢は58歳、しかも現役の会社員である。長男とのコミュニケーションが途絶えていたのだろうか、いきなり新型インフルエンザと聞いて、さぞや慌てたことだろう。

私が幼稚園児だったころ、我が家に詐欺師がやって来たことがある。仕立ての良いスーツを着た男が「お父さんの古くからの友人で・・」と、菓子折りを下げて訪ねてきたのだ。しかし当時は両親とも深夜まで働き詰めで、田舎から出てきたばかりの祖母と私が留守番をする貧乏借家住まい。おもてなしなど出来ようもない。

祖母が「家人の帰りは遅くなります」と告げると、その男は「平気です。待つことには慣れてます」と、図々しく上がりこんでくる。さらには「いやー今日は暑い。ビールか何か貰えますかね」との要求。仕方なく冷蔵庫に1本だけあったビールを出し、客間に男を2時間ほど放置しておいた。

「帰ってきませんね」。客間の様子を見に行った祖母に、男が困った表情を見せる。
「財布をね、落としちゃったらしいんですよ。申し訳ありませんが3千円ほど貸して貰えませんか?」
私たちはとても同情した。財布は母が持って出ているので、全財産は小銭入れの数百円だけだ。平謝りする祖母に後ずさりしながら、男は口をへの字に曲げて帰っていった。深夜に帰宅した両親に聞けば、そんな友人はいないし、詐欺師だろうとの推測。
「菓子折りを貰った上に、2時間も待たせて悪かったねえ」と、みんなで大笑いした。久々に一家団欒の温かい夜となった。

当時はATMなど無かった時代だし、電話だって一般家庭では呼び出し電話や共同電話なので手間がかかる。詐欺師は堂々と顔を出さなくてはならない。従って渡せる現金がないことが、いちばんの詐欺防止策だったのだと思う。貧乏バンザイ。世の中、何が功を奏すか分からないものだ。

今回の新型インフルエンザ詐欺で100万円も騙し取られた被害者はお気の毒であるが、これをきっかけに家族のコミュニケーションが復活することを祈っている。

コメント

  1. 大熊ねこ より:

    こんばんは
    何事もなく済んでよかったですね(*_*)
    相手の逆ギレでケガでもさせられていたらと思うと、なかなか恐い思い出ですね(;^_^A
    それにしても、人の情けを利用する詐欺には本当に腹が立ちます。
    詐欺をする人は、日常で思いやりを実感する事が少ないんだろうなぁと、気の毒にも思えてしまいますね。

  2. yuris22 より:

    大熊ねこ様

    詐欺師って堂々としすぎる態度から、怪しい・・って見抜かれるんですよね。あまりにも完璧な演技に、自己愛が過剰な人なのかなと思います。もともと詐欺師になりたくて生まれたのではないでしょうにね。

  3. marie より:

    びっくりです!
    こんな詐欺師までが出るなんて・・・。
    詐欺師までいかなくても世の中ズルイ人間はたくさんいますよね。
    それも小学生からいるからびっくりですよ。
    最近我が家に遊び来る小学6年生の男子がいるんですが、来るたびに「ゴミ」を置いて帰ります。
    先週の土日は自分の飽きた携帯のストラップを我が息子に渡し(要は自分が要らないから遠回しに捨てて行った)、
    今週はマックのジュースとポテトのゴミを車庫に置いて帰ったとの事。しかも、うちの息子に「捨てといて」と言ったらしい・・・。
    下手に感情的に出れば向こうの親との関係にヒビが入りそうだし、子供同士の事に必要以上に私が出れば苛められるかも・・・と思ったり、なんか疲れます。
    親ってこんなに大変なのか・・・と思い知らされました。

  4. yuris22 より:

    marie様

    まるでジャイアンかスネオみたいな子供ですね。憎たらしい。
    感情的にならず、直接本人に冷静に言ってきかせるのがベストかと思います。たぶんその子の家庭は推して知るべしですものね。・・てか、ちょっと母親の顔が見てみたい気もします。

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