被災者を助ける被災者の温情

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6月30日の仙台は晴れて気温が30度を超え、新幹線から降りた駅構内はモアーッと蒸していた。目指すは石巻。駅レンタカーでワンボックスカーを借り、恵比寿ロータリークラブのメンバーたちと石巻市の社会福祉協議会へと向かう。6月20日の日記に書いたように、民生委員さんたちに26台の電動アシスト自転車を贈るためである。

「仙台で30度を超える日は年に数回しかないのに、今年の暑さは特別です」。
同行してくれた現地の女性(メンバーの会社の社員さん)が教えてくれた。彼女は家も会社も被災したというのに明るく元気で、自転車に「頑張ろう東北」のプレートを付ける作業を手伝ってくれるという。

プレートの取り付け
電動アシスト自転車
大震災から111日。石巻市の中心街へ入ると未だ信号は復旧しておらず、警察官が手信号で車を通している。商店街のほとんどは店内が津波に破壊されたまま放置されているが、一軒だけ営業している和食屋へランチに入った。天丼を頼むと海老2本とイカ、白身魚、野菜の天ぷらの豪華版。冷奴と煮物、味噌汁、漬物が付いて1,000円という安さである。ネタの仕入れも大変だろうに、サービスの良さには感激させられた。

お腹いっぱいになって外へ出ると、人影は私たちだけ。異臭というか、乾いたヘドロの臭いが漂っている。社協の建物に入ると壁には津波の跡。貸し出し用に保管してあった介護用品も流されてしまったそうだが、今は全国の支援者から送られてくる車椅子や介護ベッドが1階ホールに集まってきていた。

石巻社協
壁に津波の跡
車椅子と介護ベッド
手分けして自転車にプレートを取り付け、代表の民生委員さん、事務局長と記念撮影。その後、3階の会議室で被災状況を伺ったが、「石巻市は死者が3,000人。あと3,000人が未だ見つかっておりません」と地図を広げて語る局長、「ありがとうございます。これで私たちも個人宅を回ることができます」と涙声の民生委員さんに、私たちは返す言葉も見つからない。「ご要望があれば、何が欲しいかを直接私たちに言って下さい」とお願いして、社協をあとにした。

贈呈式
被害が甚大だった沿岸地域を車で走ってみたが、ガレキを処理するユンボとダンプがいるだけで、住民もボランティアの姿も見当たらない。とても窓を開けられない黄色い埃が舞い散るなかで、他県から来た警官が信号機代わりの交通整理をしている。見たところ工業地域は片づけが進んでいるものの、壊れた住宅が並ぶ地域は手つかずのまま。復興どころか、復旧もまだ遠い先といった様子だ。

ガレキの山
重たい心を抱えたまま仙台駅へと帰途につき、途中の多賀城市で、被災したメンバーの会社(支社)を見せてもらうことにした。建物の前には積み上げらた車の山。壁には穴が空き、1階の倉庫には車が15台流れ込んできたという。脱出したドライバーたちは積み上げた資材の上で夜明かししたそうだが、全員の命が助かったことを社員さんたちは何より喜んでいた。

多賀城市の倉庫
車の山
しかし被害は想像以上。2,500万円で購入したばかりの機械は海水に浸かり、修理すれば2,600万円かかるとか。奇跡的にでも動いてくれないかと社員たちが毎日磨いていると聞いて、みんなが社長に向かって一斉に叫んだ。「人助けなんてしてる場合じゃないでしょう!自分がいちばん被災しているのに!」

5月の牡鹿半島の炊き出しではBBQの魚を焼き続け、6月の気仙沼大島の炊き出しには自分が行けないからと多額の寄付を下さり、そして今回の石巻への行き帰りは運転手を買って出て、こんな善人が世の中にいるのだろうかと頭の下がる思いでいっぱいになる。「気を付けて帰って下さいね」と手を振る社員の皆さんの笑顔は、経営者の心同様に嘘偽りのない笑顔だった。

被災地へは何度行っても慣れることはないし、津波の傷跡を見るたびに胸が張り裂けそうになる。私以上に回数多く炊き出しに行っている女性メンバーが「もう行くのは、やめようと思う」と呟き、その理由は聞かずとも分かる。

次回は7月24日に、再び逗子チームで気仙沼大島での炊き出し。仮設住宅に入っている方々の気晴らしになればと準備を進めながら、心身のリハビリをするこの週末である。

追記:7月10日
被災地は害虫の発生と暑さとで、炊き出しが出来る状況ではないと聞きました。食中毒の危険性を考えると、逗子チームとしては何か別の支援を考えるべきと思います。もし手に入るなら扇風機などの「涼」を贈るため、7月中に支援金集めのフリマを行いますので、このブログの予告をご覧くださるようお願いいたします。

コメント

  1. tabahiko より:

    被災地に支援に出向くとは大変ご立派ですね。
    すごいと思います。

    リフレッシュ法、もしよかったら参考にしてください。
    http://www.youtube.com/watch?v=r5McGB552Dc
    お役に立てなかったら申し訳ないです。

  2. N より:

    被災地での支援ありがとうございます。
    最近では「炊き出し」ではなく「振る舞い」とうたって
    いるようです。
    また、大島小学校での炊き出しを何度もみましたが、
    いつも後片付けに問題があります。
    割り箸が散乱していたり、炭を消した時の水をそのまま
    グラウンドに捨ててあったり・・・
    炊き出しをしに来た人、食べに来た人はとても満足して
    帰られておりますが、事前準備や後片付けをしている
    人達がいて、その人達も被災者であったりします。

    7月24日頃ですと、仮設住宅へ入居されて約1ヵ月
    です。慣れた頃でもあり、疲れが出てくる頃でもあるか
    もしれませんので、気晴らしが必要かもしれませんね。
    是非、後片付けの事も考慮して、みなさんを喜ばせて
    あげてください。

  3. yuris22 より:

    tabahiko様

    リフレッシュ法ありがとうございます。
    私もあと少々若かったら、歌い踊ったんですが・・・

  4. yuris22 より:

    N様

    「炊き出し」ではなくて「振る舞い」。新しい表現を教えて下さってありがとうございます。でもちょっと傲慢な感じの言葉ですよね。もっと適切な言い回しがないものか、考えてみたいと思います。

    大島小学校で炭を消した水の処理は、確かに綺麗と言えなかったかもしれません。ゴミは全て片づけたはずですが、行き届かない部分は本当にごめんなさい。
    使わせて頂いた給食室も何度も磨いて片づけをしましたが、ちゃんと元通りに復元できたか気になっておりました。ご迷惑をおかけしたら本当にごめんなさい。
    立つ鳥あとを濁さずが、完璧でなくてはなりませんね。

    ところで私たちが24日に伺うことについては、ある事情がありペンディングになりました。万が一行けなくても、集めている支援金については心残りのない使い道を探したいと思っております。仮設住宅の皆様に扇風機を届けたいんですが、どこを探しても品切れなんですよね。なんとかならないか画策中です。

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