外出するに当たって私の最大の悩みは靴である。カジュアルな服装ならスニーカーで問題ないが、スーツやワンピースでお洒落に決めたい時が困るのだ。というのは足に合わないパンプスで長時間歩いたせいで、左足の小指に魚の目が出来てしまい、爪先の細い靴を履くとひどく痛むのである。下駄箱にはムカデが履くほど(?)沢山の靴が入ってるのに、どれも合わないとは情けない。
解決策としては痛くない靴をオーダーするしかないと、鎌倉の御成通りをウォーキング中に見つけた老舗のオーダーシューズ店に立ち寄った。お客が誰もいない店内、暇そうにしている女性スタッフに声をかけると「今のところオーダーできるのはこの種類だけです」と、超ババくさいデザインの靴を指差した。
既製品でいいからデザインが良くて楽な靴はないかと聞くと、幾つか出してきたのはEEEの幅広の靴ばかり。私は10年前まで青山のカルツェリア・ホソノでオーダーしていたのだが、その時に測ってくれたワイズはCなのである。幅広の靴では脇がパカパカ開いてしまうと言うと、「誰でも歩くときには脇が開きますよ」と反論する。ワイズが広すぎる靴を履いたから足が前に滑って小指を痛めたのに、いくら説明しても理屈を分かってもらえず、相手は挑戦的に今度はEEEEのダンビロ靴まで出してきた。シューフィッターのいないオーダー靴店なんて、職人のいない寿司屋みたいなものである。
ここで潔くNOと言えないのが私のダメなところ。仕方ないのでストラップで甲を押さえるデザインを選び、気になる部分の直しをお願いした。仕上がり予定日を聞き、上がってきたら連絡して下さいと頼むと、電話は出来ないと言い張る。
イラつきながら支払いをしようとすると、「要らない靴を持ってきたら一足1000円で下取り」の看板が目に入った。なんで教えてくれないのか、家には履けないムカデの靴がいっぱいあるというのに、どこまで不親切なんだろう。何の因果でこんな店で買うはめになってしまったのだろうと後悔しながら、結局は翌日に要らない靴を持ってくることにした。
そしてあくる日。前日のトレーニングウェア姿ではなく、エルメスのバーキン&キャリアウーマンスタイルで店を訪ねたところ、店員の態度がガラッと変わった。服装で客を判断するとはとんでもない接客態度である。溜まると割引があるスタンプカードをくれるというのを丁重に断った。
ここまでして手に入れたパンプスであるが、ほとんど履かないうちに不要になった。家の近所にフットケアサロンを見つけ、魚の目を除去してもらったからだ。
「日本人はワイズの細い人が多いのに、楽だろうと勘違いしてEEEを選んでしまうんです。特に若い人にその傾向が強いですね」と、医療資格を持つ「足のセラピスト」が丁寧に角質を削ってアロマオイルでマッサージをしてくれた。おかげで今は捨てる寸前だった靴たちが復活して、玄関で服とのコーディネートを悩むことがなくなった。
腹立ちまぎれに靴屋に持って行き、1,000円で下取りしてもらったブランドシューズは返す返すも勿体ないことをしたと思うが、高い授業料を払って見栄をはった自分が最も悪い。足に合った靴選びがどれほど大変かを思い知った失敗であった。
コメント
僕も靴には少し悩みがあります。
左足に装具を付けているので、冠婚葬祭以外は誰に会うでも、2980円のマジックテープのスニーカーです。初期の頃は気が引けましたが、歩行の安全第一で平気になりましたよ。
でもオシャレが出来なけどね。まあ外見に合っているかも?
的は逗子の素浪人様
歩行の安全は何より大事ですね。
実は25日の夜、歩いて帰る途中に転んで顔面着地しました。スケッチャーズは酔っぱらってる時に履くのは危険行為です。みごとに鼻の下から顎まで腫れ上がり、外出できる顔ではありません。新年会までは禁酒します。