こちら無料サポセンでございます

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今回の風邪は凄まじかった。鼻水と咳は止まることを知らず、熱は39度を超え、何を食べても苦いので食べ物は喉を通らない。弱り果てた末にウツラウツラし始めた朝っぱらに、枕もとの電話が鳴った。以前私が、友人のよしみでホームページを作って差し上げた高齢者からである。声がガラガラでお喋りできる状況でないことを告げたが、「あら大変ねえ。お大事にしてね。それでね・・・」と話は続く。

彼女の主張は「自分のホームページを見られなくなった。表示しようとするとドメイン云々といった意味の分からない英語の文章が出てくる。もしかしてこれは、あなたがホームページに変なセキュリティをかけたせいじゃないのか。家族もおかしいと言っている」というものだ。

数年前にそのページを作った際、私はFTP制限(トロイの木馬といった不正アクセスによるファイルの改ざんを防ぐ対策)はかけたが、閲覧制限など一切かけていない。
「どうやってご自分のページをご覧になっていますか?」と聞くと、「googleに自分の名前を入力したら以前は出てきた」。しかしその方法では候補が表示されなくなったのでhttp://・・・のURLを入れてみたところ、英語の変な文章が出てくるのだという。

枕もとのノートパソコンで早速試してみたところ、google検索でもURLの直接入力でも表示されて問題なし。ウイルスが混入している形跡もない。もしかして何かの拍子にプロバイダの閲覧制限リストに入ってしまったのでは?と聞くと、「プロバイダって何?NTT東日本のこと?」の質問がきた。専門用語と固有名詞は通じず、どうやってパソコンでネット閲覧ができるかの仕組みを説明し、やっと引き出せた答えは5月にO××からJ××××に切り替えたとのこと。
「そういえばあの頃からホームページが見られなくなったんだわ。機械を設置に来た業者、なんだか感じ悪かったのよ。きっとあの人が変なことをしたんだわ」と怒り始める。5月に始まったことを何故今このときに・・とガックリきたが、即刻J××××に電話してみるということで話は収まった。

そして夕方、また結果報告。J××××に電話したら部署をたらい回しにされ、ブチ切れて「上司を出しなさい!」と怒鳴ったところ、緊急対応という形になり5日後に来て貰えることになったという。「はあ~そうでしたか。良かったですね~」とお相手しながら、熱で意識はもうろう。声の頼りなさを察知してか「あなた、ちゃんと食べてるの!?」と叱って戴いた。

しかし電話は翌日にもかかってきた。「風邪どう?」と聞かれて「まだ39度から下がらなくて」と答えると、前回同様に質問コーナーがスタートしたのである。「やっぱりホームページが変なのよ」って、業者を待たずしてまたそこに戻るんですか~っ!!
「分かりました。もしかしてプロバイダじゃなくてブラウザに閲覧制限がかかっているかもしれません。IEではないブラウザで確かめるために、Google Chromeをインストールしてみたらどうでしょう?」
「それならもう入ってるわよ。そこに文字を入れても出てこないって言ってるんじゃないの」
「それはGoogleツールバーで、ブラウザじゃないと思います」
カチャチャという音。
「Googleよ。ほらね!何回やってもINBOXってのが出てきて、ドメインがどうとかって英語で書いてあるのよ」

そこでピンときた。彼女は「INBOXツールバー」を何かの拍子にインストールしてしまったのである。この悪名高き詐欺ソフトは一度インストールすると仲間の詐欺サイトへの経路を作り、どんどんパソコン内に詐欺ソフトをインストールしていく。彼女の力量で退治を試みれば逆に被害が広がりかねないので、パソコンを買った際に同梱されていたソフトでシステムを初期化するか、さもなければパソコンのサポートセンターに電話して対策を請うように伝えた。
「じゃあ2日にくるJ××××はどうすればいいの?」
「その会社のせいじゃないので、取り消しにすれば如何でしょう」
「だってプロバイダに電話するんでしょ?」
「いいえ、パソコンの製造メーカーです。どこの会社ですか。」
「N××よ。」
こんな会話を繰り返し、「わかった。保証書を探して電話してみるわ」の答えを得て何とか終わらせて戴いた。

そして翌朝。「N××に電話したら、ちょっとパソコン良くなったわ」との意味不明な電話があり、「風邪どう?お医者さんに行った?」の質問に「週末だったので行けませんでした」と答える。「あなたは不摂生しすぎるから・・」とお説教され、ありがとうの一言もなかったのは寂しかったが、まあ良いのである。詐欺ソフトが退治できて、他に被害が広まらずに済んだのが何よりだ。

私が人生で最も愛しているのは与六であり、二番目に愛しているのはパソコンで、猫とPCを語らせれば一晩では足りない。例え持ち主が誰であろうとパソコンが苦しんでいるのなら直してあげたいと思う溺愛ぶりから、PC関連の仕事に入ったとも言える。ただし職種はトラブル相談のサポートセンターではなくWEB制作なんだけど、お人よしが高じてついつい嵌まってしまう無料サポセン。風邪が治りかけた今夜は、赤ワインの味が苦いか甘いかを一口嗜みたくて、どうか電話の呼び出し音が鳴らないようにと小さな願いをかけている。

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