二十四節気のひとつ、1年でいちばん昼が長い「夏至」を知っている人は多くても、七十二候の「半夏生」を口にする人は少ない。二十四節気を5日ずつ(初候、次候、末候)に分けた期間が七十二候で、絵画的な美しい言葉が多いのだ。
2019年の夏至は6月22日。夏至の七十二候は「乃東枯」「菖蒲華」「半夏生」の3つ。
乃東枯(なつかれくさかるる)
どうしてこんな読み方になるのか不思議な漢字。「乃東(だいとう)」とはウツボグサのことで、別名を「夏枯草(かこそう)」と言う。冬至に緑の芽を出して(七十二候は乃東生)、夏至に紫の花を咲かせ、盛夏には枯れた色になることから「乃東枯」なのである。
菖蒲華(あやめはなさく)
漢字だけ見るとアヤメかカキツバタか分からないが、簡単に見分ける方法がある。3本に垂れ下がった外花弁の根元が網目状になっているのがアヤメ。花あやめという呼び名も。カキツバタの根元は白い筋で、ハナショウブの根元は黄色い筋になっている。
ちなみに白あやめには他に、くるまあやめ、ちゃぼあやめ(三寸あやめ)といった種類がある。三寸あやめは花あやめよりも丈が短いので、ニワトリに対してチャボをイメージしたのだろう。
「ひとくきの白あやめなりいさぎよき」 日野草城
半夏生(はんげしょうず)
2019年の半夏生は7月2日。夏至から数えて11日目にあたる。昔から田植えの終わりの目標にしたらしい。この日に降る雨は大雨になるとされていて、その名も「半夏雨」という。
「半夏生草」は水辺に生えるドクダミ科の多年草。6、7月ごろになると緑の葉が白色に変化するのが、半化粧したように見えることからこの名が付いた説もある。見た目は美しいのに、草全体に独特の臭気が漂う。悪い虫を寄せ付けない、ガードの固い貞節な女性のようだ。
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