神経を張り詰めるトラブルと戦ったあと、溜息をつきながら車のエンジンキーを回した。
ラジオからは聞きなれたパーソナリティの声。
点灯したカーナビの行き先から自宅を選んで、ギアをドライブに入れる。
いつものように第3京浜から横浜新道へと走っていくうちに、どこかへ寄り道したい気分になる。ベイサイドマリーナに行ってみようか、いっそ箱根の温泉まで足をのばしてみようかと、ハンドルを握る手が誘惑する。
仕事場から家に戻る前にワンクッション。どこかへ寄りたくなるのは私だけではないだろう。
例えばマンデリンの美味しい珈琲屋であったり、負けを取り戻したいパチンコ屋であったり、昨日の続きが読める駅ナカの書店であったり、常連が集うカラオケスナックであったり・・、人それぞれ立ち寄りたい場所があるはずだ。
ホッと一息ついて、溜まった気を逃したい。
ウインカーを右に出せば自宅なのだけれど、あえて今日は直進。
逗子マリーナの端にある公園に車を停めた。日没を待っていてくれた相模湾に、両手を広げて挨拶と深呼吸をする。母なる海を抱きしめる。
今日は厳しかったよ。でもここまで帰って来たよ。
私を癒してくれる景色と一緒に無言の10分を過ごす。いつでもここにいてくれる大親友。
自宅に戻って鍵を開けたら、家の中には暗い気持ちを持ち込まないようにしよう。
生まれた場所でなくてもきっとみんな、ごく近い場所に心の故郷を持っている。
コメント
>マンデリンの美味しい珈琲屋
わたすの町には、このような粋な店がなとです。
でも、どうも神経が高ぶって「このまま帰るとやばいな」と思うときは、車中でクラシックをかけながら安全運転してます。下手すると居眠り運転になりそうだけど、嫌な高ぶりを収めようと努力している今日この頃です。
本当は森の中で目を閉じ、風、虫、鳥、木々のささやき、川のおと、森の声に心を委ねるのが一番だけど。
素浪人様
車を運転することも、ワンクッション置ける行為ですね。
1人になれる場所としては最適です。
私はたいていFM横浜を聞きながら運転してるかな。