サバイバルな男の飲み会

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「連休なのに観光客が少ないな」
「もしかして今日は平日じゃねえか?」
「なに言ってんだ。25日だから土曜日だ」
「ウスバカ、今日は30日だべ!」

こんなおトボケの会話が聞こえてくる逗子市小坪の漁港。午後になると、家の中より外のほうが暖かいと「浜で1杯やんべ」の常連が集まってくる。漁師もいればサラリーマンもリタイア組も魚屋の店主もいて、時々は新参者の私までゲストで加えていただく。

今日のつまみは1パイの蛸(たこ)。飲むためにはみんなが一致団結だ。
どうやって茹でようかと辺りを見回し、浜をうろついて木切れを拾ってくると、錆付いたグリルに火を起こして、漁師小屋の脇に転がっている鍋を乗っける。漁船のそばからホースを引っ張ってきて鍋に水を入れ、グラグラと沸き立つまで豪快に火を炊く。
その間に、蛸は生きているのをビニール袋の中で塩もみし、何度も水洗いして臭みを取ってから、沸騰した鍋にエイヤッと放り込む。

お姫様のごとく椅子に座って待つ私は、ただひたすら感動するのみ。頭でこねくり回す理屈なんて必要ない、海の男たちの経験と技を目の当たりにする。どんな食糧危機が来ても、船が難破して無人島に流れ着いても、彼らなら充分にサバイバルできるだろう。

30分後。砂まみれのテーブルの上には、塩味のきいた蛸ブツの皿。どれどれと指でつまみ、輪になって座ると缶ビールでの乾杯が始まる。今日の話題はポロシャツのブランド名。
「ほら、馬で玉を蹴るやつだよ」
「クリケットだ!」
控えめに「それはポロ(ラルフ・ローレン)じゃないですか?」と口を挟むと、そうだそうだと大拍手。何の裏表もない、明るさが取り得の連中なのだ。

風が冷たくなって我慢できなくなるギリギリまで頑張り、5時のチャイムと共にお開きとなった。太陽と潮の香りと缶ビール2本の心地よさ。帰って熱いお風呂に入ったら、コロッと寝てしまうことだろう。だんだんと漁師町に溶け込んでいく物書きは、「~だべ」の小坪弁の修行中である。

コメント

  1. marie より:

    「~だべ」は、東北弁でもありますよ(笑)
    それにしても、毎日が恐怖の連休かもしれません。
    去年は地震に怯え、今年は新型インフルエンザに怯え、
    生きていくのも大変ですね。
    しかも、東北は朝晩の気温差の激しいこと!
    おかげで風邪を引きそうになりますよ。
    その度に「熱が出たらどうしよう」「体が痛くなったらどうしよう」と神経質になっています。
    「サバイバルな飲み会」でもやっていれば、ウィルスは寄ってこなそうでうすね(^-^)

  2. yuris22 より:

    marie様

    漁港の連中は、ウイルスも避けて通るほどのタフさです。というより毎日飲んでるので、アルコール消毒されてるのかも(笑)
    湘南は昼間は暖かくてTシャツでOKなのですが、夕方からは急に気温が下がります。お互い風邪には気をつけたいですね。

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