昨日はピアニスト&編曲家である友人の計らいで、とある音楽番組の公開収録に忍び込ませてもらった。場所はテレビ局のスタジオではなく、舞浜にあるライブハウス。懐かしのスタンダードポップスを布施明、松崎しげる、平尾昌晃といった往年の(?)スターが歌いまくるステージである。
私は制作サイドにいたことはあっても、客席側に座るのは初めて。見ず知らずのお隣に「ワクワクしちゃうわよね」と肩を叩かれ、100名近くの観客は最初からフレンドリーな雰囲気である。3時間近くの長丁場。「今のうちにトイレに行っといた方がいいわよ」と、公開番組慣れした前列のお姉さまたちからご指導を受ける。
収録前に舞台監督が前に立ち、まるで幼稚園のお遊戯のように拍手と手拍子のレッスンを始めた。手を上げたら拍手というのは知っていても、手拍子の稽古にどうしてそこまで時間をかけるのか不思議である。
本番が始まり、ライトを浴びた歌手がアップテンポの曲を歌いだしたところで理由が判明。手拍子に年齢差が表れるのだ。若い世代は「×、バン、×、バン」で裏打ちをするのに対し、高齢の世代は「バン、×、バン、×」と表打ちをする。演歌、民謡に慣れ親しんだ方たちには洋楽の手拍子は身体に馴染まないのだろう。
ちなみに私の左隣は裏打ちで、右隣は表打ち。そのお隣は中年のご婦人だったが、どう手を叩けばいいものかフリーズしている。裏打ちと表打ちの合間に「バン」と叩いたりして、まるでエアロビのレッスンだ。
だんだん収集がつかなくなる会場のビート感覚。負けじと引っ張るバンドと歌手。曲が終わると左隣の彼女は赤くなった手のひらにホーッと息を吹きかけていた。なんだか無性に楽しく、一仕事終えたという一体感が会場中に溢れている。ステージは観客がいてこそ成り立つのだと、「もう1人の出演者」を改めて教えられた気分だった。
収録が終わって入った隣のパブレストラン。25曲を弾き終わった友人は、この瞬間を待っていたとばかりにビールを一気飲みする。げっそりした顔に徐々に元気が戻り、好きな音楽をやっていることの喜びを語りだす。
ポップスでもロックでも演歌でもクラシックでも、古くても新しくても、楽しければいいんだよね。最後に全員で歌った「恋は水色」が心のお土産となった夜だった。
コメント