超売れっ子から孤独の死へ

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俳優の山城新伍氏が亡くなった。享年70歳と聞いて驚いている。故人にこのようなことを言って申し訳ないが、容貌からしてもっとお歳を召していると思っていたからだ。

私が恵比寿のマンションに住んでいたころ、山城氏はお隣の部屋の住人だった。時々フロアの通路やエレベーターで一緒になるのだが、あの形相でジロッと睨まれると、とても目礼できるような雰囲気ではない。テレビの画面に出てくる芸能人の顔とは違って、まるで80歳を超えた老人。それもかなり重い病気を患っていることが見てとれたので、見てはいけない姿のように思って目を伏せた。

道路を渡ってヨロヨロと向かいのTSUTAYAに歩いていく姿は、界隈では有名だった。昼間から酔ってエレベーター前で転がっていたり、デパートの食料品売り場でスタッフを怒鳴る姿も目撃されている。後から思えば、独り暮らしの不便さと、糖尿病の悪化で立っているのも辛くてイライラしていたのだろうと思う。

やがて山城氏は同じフロアの、もう少し狭い部屋に引っ越したので、同時にドアを開けて鉢合わせする気まずさは無くなったが、姿を見かける回数も減っていった。その一年後ぐらいだったか、私の部屋を訪ねてきた友人が、山城氏の部屋のドアが開けっ放しになっていて、数人の男性たちが出入りしているのを目撃した。布団が敷きっ放しで相当汚れた室内だったという。

それからホテルに引っ越したとか、高級老人ホームに入所したとかの噂を聞いた。私も逗子に引っ越したし、すっかり山城氏のことを忘れていたら今回の訃報である。元妻と娘とは絶縁状態。町田市の特別養護老人ホームで、しかも誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなったとは、切なくて涙が出る。

頼れる人間がいなくなった時、寝たきりで自殺さえ出来なくなった時、脳死を待たずとも本人が希望すれば生命を絶って貰う権利はないのだろうか。

私は日本尊厳死協会に入っているが、何より怖いのは半身不随や呆け老人になったまま生き長らえることだ。「死にたいんだよ」と老人ホームから電話をしてくる父の声を聞くたびに、自分の老後まで不安になる。「長生きしなくちゃ」と父を励ます空しさに溜息が出る。

自由に空を飛べる魂となった山城新伍さんのご冥福をお祈り申し上げます。若々しい姿に戻って、作りたかった映画制作に取り組んで下さいね。

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