歌詞に至るまでの一人旅

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地方の町と町を結ぶ、深夜の中距離列車に乗っている。それはビルがひしめき合う街ではなく、駅前に煤けたアーケードがあるような田舎町を結ぶ列車だ。

秋が深まっていく。ノイズ混じりのアナウンスの後に止まったのは、名前も知らない駅。切れかけた蛍光灯がバチバチと音を立てているホームには、乗降客が誰もいなくなり、線路脇の茂みからコオロギの声が聞こえてくる。ずいぶんと長く止まったままだ。どうして発車しないんだろう。そこにいきなり特急電車がビュンと窓を弾いて、静寂を突き破る。

プシューッ、ガタン、ガタン・・。発車のベルが鳴ったか鳴らないか、ドアが閉まって車両が動き出すと、向い掛けの固いシートに枕木の振動が伝わってくる。冷たい窓ガラスに頬をつけ、手のひらでシェードを作り、流れていく景色に目を凝らす。

 

にじんだ光の塊が一気に遠ざかると、踏み切りの赤い点滅が町とのサヨナラ。暗闇はどんどん深まって、時おり見える民家の灯りに人心地がつく。真っ黒な森に包まれた電車はトンネルを抜け、また真っ黒な森へ。心細くて泣きたいような気持ちになるころ、またポツポツと民家の灯りが現れて、光の数が増えていくと共に次の町へと到着する。それはやっぱり名前も知らない駅で、私が降りる場所ではない。

 

どんな意味があるのか、月に数回同じ夢を見る。やがて電車はターミナルに到着するのだけれど、そこは予想外の遠い駅なのだ。改札を出て路線図を確かめて、帰りたい場所まで何を乗り継いで行けばいいのかと途方に暮れる自分がいる。懐かしい駅に帰りたい、待っている人に会いたい、でも誰が待っているのか顔が思い出せないまま、また切符を買って次の中距離列車に乗る。

 

こんな夢の旅路は、私の人生を物語っているのだろうか。恋をしては遠ざかり、淋しさに耐え切れなくなったころにまた恋をする。中距離列車には乗り飽きてしまったと思いつつ、不器用だから他の列車には乗れない。

私を追い越していった特急列車の乗客は、とっくに温かいベッドで眠りについているころ。どちらが幸せとも言えない。途中下車できなかった駅に未知なる憧れを抱きながら、たぶん諦めてまぶたを閉じてしまうのだろうから。

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以上、スピリチュアルなテイストも含め、作詞家の戯言&プロット&舞台裏。今夜は飲み過ぎました。明日はこれを歌詞にしなくちゃです(^^;

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