白いウォーキングシューズを手に入れてから、足取りが軽くなった気がする。昨日は渋谷駅から宮益坂を上り、青山の骨董通りまで歩いた。ところが週末の青山は普段と様相が違い、ショッピング客たちで混雑。横に広がり、急に立ち止まり、まるで亀の行進だ。隙を縫って追い抜きながら、1人でイライラしている自分が無粋な異邦人に思えてくる。
青山学院前の交差点。歩行者信号を待ちきれずに歩道橋へ上った。緑が濃くなった中央分離帯の真上から青山通りを見おろすと、下界の喧騒からタイムスリップ。大学一年だった初夏がふと蘇ってきた。新入生たちにとって春が終わり大学生活がルーティーン化してくると、恋に触手を伸ばしたくなる季節。夏休みに肩を並べる彼氏をゲットするまで、毎週のように合コンやパーティーが続いたものだ。
甘いカクテルを飲みすぎた赤坂のディスコ。先輩の紹介で隣に座った男の子が駅まで送ってくれるという。エレベーターを降りて、飲食店が連なる路地を幾つも曲がると、ニューオータニを見上げる赤坂見附の交差点に出た。帰りのルートは銀座線で渋谷に出て、東横線に乗り換えて田園調布へ。ところが酔いすぎて電車に乗れる自信がない私に、彼が頼もしい声で提案した。「渋谷まで歩こうか!」
関西の田舎から出てきた18歳と湘南育ちの18歳は、まだ東京の地理には詳しくない。「たぶんこっちだよ」と方向を定めた青山通りを、右にフラフラ左にフラフラ、手をつないで歩く。しかし本当のことを言えば、手をつないだ瞬間に酔いのほとんどはすっ飛んでいた。ずっと女子校だった私にとって、男の子と夜の街を歩くのは初めての体験。一足飛びに大人の入り口に立った気がした。
どこを何時間ほっつき歩いたか終電には間に合わず、二人で代々木競技場のベンチ。空が明けていくのを眺めながらファーストキスをした。今度は恋人同士として手をつないで、残りの道を始発電車の駅まで歩いた。あとは忘れてしまった大学時代の短いひとコマ。
世代は代わり、恋人たちも若返り、懐かしいビルも建て変わる。初めての恋が歩いた青山通り。誰もいない歩道橋の上から手を振ると、返事をするように柔らかい風が帽子を揺らしていった。
コメント
私が18歳の頃は、既に六本木のディスコで働いてたなぁ~。
それまで都内に行く事があっても昼間しか無かった。
新宿駅界隈の明るさに驚いた初めての夜。
行き交う人達が眩しく見えて、何故か自分が田舎物のような感じがしました。
女子高出の織田さんにもさぞや刺激的な時期だったのでしょうね。
湘南ミヤウチ様
六本木のディスコ、夢中になりましたよ。
田舎くさい子供と思われたくなくて、必死にメイクやおしゃれも研究しましたが、当時の写真を見るとダサダサです・・
大人に見られたい、逆アンチエイジングの年頃が懐かしいです。
19年前私は新卒で社会人になり、毎日カラオケに行ったり、休日のたびに友人と飲みに行ってました(笑)
男もとっかえひっかえ(笑)
あの頃は車の免許も取りたてでどこに行っても何をしてても楽しかったです。けれど、メイクも洋服もダサダサでしたが(笑)
今になってその当時のドラマを見ると、20歳ぐらい老けたようなメイクにファッションが多いんですよね。
時代を感じるなぁと思いました。
marie様
いいですねぇ、男もとっかえひっかえ(爆)
もし人生をもう一度やり直せるなら、今の経験を持って18歳に戻れたらどんなに良いことか。どっかにそんな映画ありましたね。