恋をすることが億劫になってきた。誰かと付き合い始めても数回のデートで白けてしまい、あとは逃げ腰だ。「今夜は一緒にいられる?」なんて囁かれた日には、「猫が待ってますから」とタクシーに手を上げて退散。あー自由になったと、独りの部屋に電気をつけてホッとする。
そんな私を見るに見かねて、男友達が言った。
「自分から好きになった相手と付き合わなきゃダメだよ」
どうして分かったのか、数々の恋愛が失敗してきた原因がそこにある。
心に火がつくのが遅い私は、「男は目で恋をし、女は耳で恋に落ちる」(ウッドロー・ワイアット)の名言が当てはまる。ルックスは好みじゃないし、セックスアピールも感じない。そんな男性でも口説き文句が上手であれば、悪い気はしない。そこまで愛してくれるなら一生喰わしてくれるだろうと、狩猟民族の女みたいな計算まで湧いてくる。
やがて潜在意識に訪れるのは、「好きじゃない→我慢すれば耐えられる→ちょっといいかも→好き→愛してる」のサブリミナル効果。しかし潜在意識のもっと奥底には、自分を騙せない自分がちゃんといるのだ。心に蓋をしきれなくなって、破綻は急激にやってくる。
2年半前に「同じペットボトルの水を飲めますか?」という日記を書いた。歳を重ねて経験と生活力が身につくほど、自我は潜在意識の上に現れてくる。同じペットボトルどころか、同じベッドも同じ空気も嫌になることに加速度がついてくる。生理的にダメな相手は価値観も違って、耳でごまかすのは無理な歳になった。
今の私に必要なのは、男性のように目で恋することだと思う。自分から好きになって追いかけていく相手を見つけること。まだまだ恋するパワーを捨てちゃいけない。
手元に2枚あるキエフ・オペラ『カルメン』のチケット。約束していた人とは行かないことになった。10月のオーチャードホールで隣に座ってくれる人を探さなくちゃと、まだ見ぬ横顔を想像している。
コメント
自分から好きになる恋ですか・・・なんか深いお話ですね。
考えてみると、私の恋愛の場合も自分から好きになって始まった恋はほとんど無かったように思います。
なぜか「私、あの人が好き」と思う人は自分にはなかなか落ちないんですよ。
自分が最初は全く興味のない男ばかり近づいてきてましたね。
逆に恋ではないんだけどなぜか性的な魅力のある男。
一度ぐらい抱かれても・・・と思う男性は近付いて来てましたね。
男も女もそう言う気持があるとお互いに近付くものなんでしょうか?
“女性は太陽…”だったり“母なる地球”だとか 遠く触れられなかったり 重力に抑圧されたり“エィッ!どっちなの!?”カルメンから“ホセでも略奪”もありかモネ(⌒‐⌒)
ぼくの友達のくまざわくんは、自分から好きになった女性には必ず撃沈。向こうから寄ってきた女性には必ずひどい目にあいます。ステキなヤツでしょ?
marie様
稲垣潤一の「ロング・バージョン」みたいですね。♪さよなら言うなら今が きっと最後のチャンスなのに 想いとうらはらな指が 君の髪の毛かきよせる♪
遊びから発展した付き合いは、意外と長続きした気がします。お互い魂胆がわかっているから、男女でありながら友人として付き合えるのかもしれませんね。
muha様
男性が女性に対して抱く憧れのイメージは、大きな見当違いがあるような・・。太陽でも地球でもなく、吸い込まれたら出られないブラックホールかもしれません。
亀吉様
哀しい無限ループですねぇ、くまざわくん。
ターゲットを男に変えてみてはいかがでしょうか。
がんばれーっ!
なーんていわなくてもyuriさんは不屈です・・・ね。
たけぞう様
逗子のオジサマたちが、今週末のBBQパーティーで、ルックスのいい好青年を紹介してくれるって言うんですよ。でもちょっと待て、前も同じようにまんまと騙されたことが・・。よく話を聞いてみると、75歳のオジイサマでした。
はいっ、噂を嗅ぎ付けて登場です。
好きになっては撃沈を繰り返していますが、そんな自分が結構嫌じゃなかったりします。
☆ベアちゃん☆
片思いでも恋をしていることには変わりなし。数撃ちゃ当たる日がきっと来ることでしょう。