心の毒を排出する夢

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喉の痛みと悪寒と共に熱が出て、一昨日からずっとベッドの中にいた。風邪にしては他の症状がなく、やたら眠い。朝昼晩と幾らでも眠れるうえに、夢も幾らでも見る。無料の映画館にいるようで暇はつぶせたが、困ったのはネガティブな夢ばかり見ることだった。過去の嫌な思い出がダイジェスト版となって登場し、はらわたが煮えくり返るのだ。

「覚えておきなさい。どんな酷い目に合うか!」
復讐を誓った次のシーンには、私を欺いたり苛めたりした人間が、不治の病になったり、商売で失敗したり、洪水で家を失ったりする姿が見えてくる。汗びっしょりになって目覚めると、現実世界も重苦しい闇の中にいるようで、また悪寒が襲ってくる。

起き上がり、しばらくボーっとしたあとに思うのは「夢で良かった」。私の潜在意識にいる悪魔が大暴れしたのは寝室の中だけで、理性でコントロールできる顕在意識までは浸食していないことにホッとした。

中国の『寒山詩』からの一節。
「人の悪を攻むるを須(もち)いず 己の善を伐(ほこ)るを須いず 之を行えば則(すなわ)ち行うべく 之を巻けば則ち巻くべし」

トラブルが起きた時は相手の非を責めてはいけないし、自分を正当化してもいけない。行うべきことは行って、引くべくときには引きなさい。物事にとらわれずに、淡々と流してしまいなさいという意味だ。なぜなら相手も自分が悪いことは分かっているのだから、火に油を注ぐようなことはせず、こらえて引いておきなさいと言うのである。

与六の「ニャア」に起こされると、外が明るい。昨日から降り続いた冷たい雨が止んで、日が射している。熱は下がって喉の痛みも取れた。どうやら風邪ではなくて、毒を排出するための熱だったらしいと思いつつ、些細なことに苛立ちを鬱積させる自分を恥じた。

夢に終始して、何事もなかった朝。心の泥を熱と汗で洗い落としたせいか、いつになくスッキリした気分である。洪水で押し流してしまった相手が、今日も元気で威張っていることを祈りつつ、街に出るとしよう。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    先日、私は大変気持のよい夢を見ました。
    内容は覚えていませんが、「もう一度見たい」と思ったのは事実です。なぜかなぁ、思い当たる節もないけど…。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    もう一度見たい夢や、続きが見たい夢ってありますね。私の場合、根性で再度見ますよ。でもその時には「これは夢なんだ」と承知しています。起きてみれば大した内容ではないのが不思議。とりあえず楽しかったという記憶のみで、昨晩はいいことがあったと満足することにしています。

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