家政婦のミタに学ぶリスニング

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民放ドラマには久しく興味がなかったが、一つだけ例外。「家政婦のミタ」が面白くて欠かさず見ている。あらゆることに超越したスキルを持ち、まるでスーパーロボットみたいな三田さんの一言「承知しました」が、次は何を引き起こすかとドキドキする。

プライベートな相談をされると「それは、あなたが決めることです」と突き放したり、相談内容を一言一句オウム返しするだけなのに、それが功を奏するのは心理カウンセリングの手法に似ている。相手を否定も肯定もせず、そのまま受容するということだ。

アメリカの心理学者カール・ロジャースが提唱したアクティブ・リスニング(積極的傾聴)では、オウム返しをよく使う。例えば居酒屋のカウンターで隣り合ったお客が話しかけてきたとしよう。

相手「やんなっちゃうなあ。今日とても嫌なことがあって落ち込んでるんです」
自分「落ち込んでるんですか」
相手「上司に説教されたんですよ。本当は私が悪いんじゃないのに・・」
自分「あなたが悪いんじゃないんですね」
相手「そうなんです。電車が止まって遅刻したのに、寝坊だろうって決めつけられたんですよ。しかもみんなの前で怒鳴って・・」
自分「みんなの前で怒鳴ったんですか」
相手「ひどいでしょう?そりゃ、遅延証明を貰ってこなかったのは失敗だったんですけど」
自分「失敗でしたか」
相手「窓口が混んでてね。並んでる間に会議が始まっちゃうと思って、急いだんですよ」
自分「会議が始まるので急いだんですね」
相手「まあ以前は本当に寝坊して、会議に遅れたこともあって・・。今日だってもう一本早い電車に乗ってれば、余裕だったかもしれませんでしたね」
自分「もう一本早ければ・・ですね」
相手「そうですね。明日は汚名挽回で早起きしますよ。」

この会話の特徴。話を要約して語尾を繰り返すオウム返しをすると、相手はYESとしか言いようがない。そのうちにポイントが絞られてきて本音を言うようになり、何をすればいいのか自ら気付いてくれる。カウンセリングの目的は相手から答えを引き出すことであり、アドバイスをするコンサルティングとは違うのである。そこに依存の関係はない。

「それは、あなたが決めることです」の三田さんは、冷静に距離を置いたカウンセラーであり、ドラマの登場人物たちは熱く戦いながら、自分で成長する術を見つけていく。

で、物書きのオダはというと・・、私は話しかけやすいタイプに見られるのか、人生相談を持ちかけられることが多い。しかしオウム返しどころか、身を乗り出してお節介に走るのでカウンセラーには不向きである。世の中には結論を出さなくていいことも沢山あるのだと、人付き合いのスタンスを家政婦のミタに学びたいものである。

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