日曜日の夜、一緒に飲みに行った友人夫婦の喧嘩に巻き込まれた。季節の割には寒すぎて、店の外でエスカレートする怒鳴り合いを仲裁していたら、いつの間にか深夜2時・・って最悪である。
タクシーで家に戻って締め切りが迫った仕事に取りかかったが、ひりつく喉の痛みと共に熱が出て、またもや体調が悪化した。ファイル添付したEmailの送信ボタンを押したのが真昼間。神経が高ぶっていたようで眠るに眠れずに、主治医から処方されていた薬を飲んでベッドに入ったのは夜の8時だった。
こんな時こそ与六は、猫と思えない看病ぶりだ。大汗をかいて布団を跳ね飛ばす私の暴れ具合にも動ぜず、チラッと目を開けては様子を伺っている。普段だったら即刻ベッドから飛び降りて他の部屋に行くのに、丸くなって寝た位置から微動だにしないのだ。猫の心 飼い主知らず。こんなに思ってくれてたんだね。
そして明け方には平熱に下がり、外の雨模様に反して目覚めはスッキリだった。車を運転してお昼からの会食に出席し幾つかのミーティングを終えた夕方に、フルーツを買って介護施設にいる父の見舞いへ行く。
「ごめんね、ずっと身体の具合が悪くて来られなかったの」と謝ると、今までありえなかった返事が返ってきた。
これまでは帰ろうとすると手を握り、お腹いっぱいでも何か食べたいとわがままを言い、しつこく名前を呼んで引き留めた父が、「俺のことはいいから、もう帰りなさい」「早く布団に横になりなさい」と、しっかりした声で私に命令するのだ。
実家で暮らしていたころ、その声には聞き覚えがある。私はずいぶん前に急性腎炎になったことがあるのだが、きっかけは風邪をこじらせたまま徹夜で原稿書きを続けたことだった。こっそりと小さな灯りをつけてキーボードを叩く書斎のドアがいきなり開いて、眠そうな顔が「もう寝なさい!!」と怒鳴った。
愛人をいっぱい囲い、母を泣かせ、娘からは幼い頃から煙ったがられていた父だったが、夜中のキーボードの音が煩いのではなく、どれほど私の健康を案じてくれていたのか、今なら分かりすぎるほど分かる。
「じゃあ帰るね」と介護施設の居室から出るとき、ドアを閉めるまで父は「早く寝ろよ」と何度も繰り返し、その眼は涙を溜めて真っ赤だった。親の心 子知らず。ごめんね、ごめんね、ありがとう。
年甲斐もなく徹夜するのはもう止めた。言葉や態度は不器用でも心配してくれる誰かがいる限り、私は正真正銘の愛を貰いながら生きている。
追記:
夫婦喧嘩した友人からメール。仲直りしたらしく、良かった良かった!(^^)!
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