これから何十年も続く被災地の格差

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東京電力が家庭向け電気料金を上げることに対し、国民が眉を吊り上げている。フクイチが原因となって日本中の原発が停止し、発電の燃料費が上がるからと言われても納得がいかない。東電が支払うのは経費だけじゃないからだ。

原発警戒区域と向き合いながら、ひたすら自己資金で頑張ってきた被災者から内輪話を聞いた。やっと警戒が解かれた家に戻ってきて仕事に就いた人は、生活補助金を貰えなくなるというのだ。壊れた建物を修理して営業を復活させた企業だって、福島の名が付くだけでイバラの道が待っている。

しかし・・。原発からの避難生活をしている人たちには、赤ちゃんであっても1人あたり10万円の補償金が東電から支払われる。家族5人であれば1ヶ月あたり50万円。それに失業補償、休業補償等も加われば、年収が7~800万円になる家庭が沢山あるのだ。今まで月収20万円だったのが、昼はパチンコ屋、夜は居酒屋に日参する生活が何十年も続くことになる。それを支えていくのは誰なのか、電気代の値上げだけでなく、当然の如く消費税値上げにも組み込まれていることだろう。そのあげく生活保護者が増えて医療費が増えて、働き手が激減した日本はデフォルトへと向かう。

地震と津波に襲われた恐怖、飢餓のトラウマ。日曜日に炊き出しに行った牡鹿半島で、女将さんが心を鬼にして宣言したのは、原則として食べ物を配るのを1人につき1人前だけにして欲しいというルールだ。何故なら、仮設住宅で1人暮らしなのに「うちには家族がいっぱい待ってるから」とゴッソリ持ち帰る住民がいて、周りからの反感を買っているからである。しかも食べずに外へ撒き散らすだけなので、炊き出しに関しては暗黙の了解で1人1個ルールとなったらしい。何も口出しできないけれど、きっと心が壊れてしまったんだよね。

誰も正解を知らない被災地ルール。平等の目が光る会場にはお料理が余り、値が張るお土産に関しては「もったいないわ」と、ボランティアが袋詰めして持ち帰ろうとしている。「これは寄附金で用意したのだから」とストップをかけると、「もう誰もいなでしょう?」の抗議。
どうにでもなれと口をつぐんでいたら、会場を貸してくれた女将さんから声がかかった。「私たちの不手際で呼びかけが出来なかったので、来て貰えなかった地区へ今から運んで行きましょう!」と。

外へ出た。海がキラキラして、真夏みたいに日差しが力強い。「今日はいいねーっ!」と、女将さんが運転する軽自動車の助手席で、一瞬ながらこの浜の友人になれた気がした。そして3分で到着した隣の地区の集会場は別世界。殆どが家に引きこもった静けさの中、住民が作ったという自慢のアンパンマンの樹細工をカメラに収めて、差し入れを置いてきた。

石巻・大原地区
家は流されても生まれ育った地に住む彼らには、1人につき10万円の補償金はない。仮設住宅は家賃が無料でも、ワカメを摂る仕事は昔のように生活費にはならない。3.11を一括りで東日本大震災と言いながら、毎日がパチンコ屋・居酒屋通いとの格差は誰が作ったのだろうか。

今回お伺いした浜では、この夏に大阪からに60人のボランティアが来て夏祭りを仕掛けてくれるそうだが、今まで幾度か続いたイベントも今回で終わりだという。その理由は聞かずとも分かる。ボランティア先では必死に笑顔をキープしても、背後にはサポーターがいない孤独のエリア。頑張ってきた心が壊れていくのを傍観しているのは、もう止めようと語りかけるもう1人の自分なのだ。

保身に走る政治家たちの主義主張がテレビに流れるたびに溜息が出る。彼らが集う東京がどんなに冷たい街かを、震えながら感じているのは私だけだろうか。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    江戸の代官様は「五輪はいらんのか!」と仰いました。
    ならとにかく日本に誘致して仙台あたりを中心にして、インフラ整備も含めて一挙にやる手があるのではないか?。
    東京は、日本は地方を犠牲にして、多くの若者を吸着して繁栄してきたと思う。この震災はその恩を返す機会としたら良いのではないか。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    オリンピックの誘致で老朽化した東京のインフラが再整備されるのは良いことだとは思いますが、なんだか怪しい目論みを感じます。首都直下型地震が近い将来起きるのを知っていて、急ピッチでの復旧のため、オリンピック開催地に世界からの資金集めをしたいんじゃないか・・なんて。考えすぎでしょうかね。

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