愛着のある古着の行方

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ウールの真っ赤なカーディガンが欲しくて、銀座での打ち合わせの後にデパートへ寄った。あちこち回ってやっと希望に沿ったものを見つけ、値札を見ると5万円。仕事帰りのOLたちはこんな高価なニットを気軽に買うのだろうかと、時の流れに付いて行けない自分がみすぼらしく思えた。

しかし高級ブランドであろうと素材が良かろうと、服は昔ほど長持ちしない。10年前に買った服をリフォームに出してもダメなのは、全体的に当時のカッティング技術が古くさいからだろうし、記憶から野暮ったさをぬぐえない自分がいるからだろう。

流行のサイクルは年々スピードアップしていき、要らない服をヤフオクに出しても売れなくなった。偽物を売る業者がはびこったオークション市場では、一般人が本物を出品したとしても、買った時の数%ぐらいの価格でしか取引されないのが現実だ。

大枚はたいて買ったアルマーニ・ブラックレーベルのジャケットだろうと、鎧みたいな肩パッドの痕跡が分かる画像では購入時期が分かってしまうし、常連の業者が上手に撮った写真には惨敗する。諦めてゴミに出すのは悲しいけれど、オークションで100円でさえ売れ残ってしまった服を被災地に寄付するのは失礼千万でしかない。

不要になった服は何処へ行く?リサイクルは出来ないの?
ある繊維業者が始めた取り組み、ポリエステル素材の服を回収して繊維に戻し、新しいデザインで再生させる「アップサイクル」の事業が脚光を浴びているという。コストが2~3割上がるので日本のアパレル業者からは却下されたそうだが、環境保護を全面に打ち出しているアウトドアウェアのパタゴニアから協賛の申し出があって道が開けた。環境に不要なものはシャットアウトし、買った商品を持ち帰る袋は持参して下さいというパタゴニアは、一見のお客よりもスタッフの方が高いプライドとポリシーを持っている。

繊維業者とアパレルとの取り組みは、「CO2が8割減になります」「永久循環でゴミがなくなります」「再生品でもこんなに良いデザインです」。
古着を集めて再生して商品力で集客する手法。ポリエルテルのアップサイクルを手がけた業者はイッセイ・ミヤケをはじめ、今や世界の155社との取引に広がったという。

数年着れば流行遅れになるカーディガンが5万円なのには抵抗がある。しかし要らなくなった服を回収してくれることで5%引きだったら、買ってもいいと思うお客がいるかもだ。なぜなら一度でも袖を通した服を捨てること、服の墓場行きを後ろめたく思う気持ちを救ってくれるからである。

服のアップサイクルのメリットはエコだけでなく、おしゃれ心活性化させる理由付けにもなるし、他の繊維にも応用が広がったらどんなに良いだろう。更には、たった1枚でも吟味に吟味を重ねて買い、ゴミを出さない消費者を増やすきっかけになることを願いたい。

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