コーラス部に所属していた学生時代、部室の窓から境川沿いに咲くソメイヨシノを眺めるのが楽しみだった。その時よく歌ったのが滝廉太郎の「花」。二部合唱のアルトのパートは今でも完璧に記憶している。
「春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
櫂(かひ)のしづくも 花と散る
ながめを何に たとふべき」
春のうららの隅田川の桜はどんなにゴージャスだろうと憧れて、船人になって一度見ておきたいという夢がやっと昨日叶った。日の出桟橋から浅草まで、12の橋をくぐりながら両岸の景色を楽しむ隅田川ラインの水上バスに乗った。
金曜日と言えども今のシーズンは満席のはず。そこで考えたのは浜離宮恩寵公園 → 日の出桟橋 → 浅草と回る720円(45分)のルート。浜離宮から乗船した段階では混んでいても、大半が日の出桟橋で下船するので、余裕で窓際の席を確保できるからだ。
出発時間まで散策する浜離宮はちょうど桜が満開。汐留の高層ビル群を背景に、懸崖となったソメイヨシノの枝が潮入の池に花影を落としている。アスファルトに囲まれていないここの桜たちは横にずっしりと広がった低木となり、一本一本が芸術品のようである。
築地川の脇にあるお花畑では菜の花が満開となり、むせ返るような青臭い匂いが立ち込めている。絵本から抜け出たような黄色とピンクのコントラストは、ここが都会であることを忘れさせてしまう。
そして待ちに待った隅田川クルーズ。水上バスの二階席は窓がないので風が冷たかったけれど、両岸に桜の花が現れるたびに歓声が上がる。お花見スポットからは船に向かって手を振る人たち。ディズニーランドのパレードの主役になったみたいだ。
「見ずやあけぼの 露浴びて
われにもの言ふ 桜木を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を
「錦おりなす 長堤(ちょうてい)に
くるればのぼる おぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめを何に たとふべき」
「花」の三番の歌詞で、ずっと誤解していた部分があったのに気付いた。「錦おりなす朝廷」ではなくて「長堤」。ずっとずっと長い堤防が続いているのが隅田川なのである。
水上バスのラストは粋な計らい付き。この時期はお花見ダイヤで、言問橋手前までの区間延長サービスとなっている。吾妻橋上流の隅田公園の桜を船上からじっくりと堪能して、また手を振りあって船着き場へと向かう。
コメント
お世話になっております。
BSジャパンでテレビ番組を制作しております掛塚と申します。
この度、番組でお花見が楽しめる船をご紹介する予定でして
その中で隅田川の遊覧船をご紹介したいと考えております。
そこで、
こちらで掲載されている遊覧船の景色のお写真を使用させていただきたいのですが
お借りしてもよろしいでしょうか?
お忙しい中、大変恐れ入りますがご検討の程宜しくお願い申し上げます。
掛塚様
承知しました。ご利用ください。
もし大きなサイズがご必要でしたら、2592×1944で保存したのがあります。
管理人