フジテレビのゴールデン帯(19~22時)の視聴率がテレビ東京に抜かれ、民放5位に転落したという。1959年の開局以来、今年10月30日に発表された決算によれば初の赤字転落。日刊ゲンダイの記事(2015年11月5日)を引用すると「上司の顔色をうかがう社員がドンドン出世し管理職になるため、現場のモチベーションは下降の一途」「給料が下がり、経費は使えなくなり、社内には不満が充満」だそうだ。
ニュース以外、私は生でテレビを見ることは殆どなく、気になるドラマだけ録画予約している。NHK『あさが来た』やTBS『下町ロケット』は次回が待ち遠しいほど面白いのは、練りに練られた原作と脚本が優れているからだと思う。自分らしく生きる登場人物に感情移入できて、応援したい気持ちが湧いてくるのだ。
一方で鼻についたのが、フジテレビ『オトナ女子』。篠原涼子、吉瀬美智子、鈴木砂羽という妙齢かつ美形の女優を揃えているのに、時代錯誤のトレンディドラマを見ているようで、女として共感できない。センスが新しいのはファッションだけ。アラフォー世代の独身女性にこんな都合の良い恋が出来るだろうかと、今どきの恋愛マンガにも登場しない設定の陳腐さ、ぶっ飛び方の中途半端さを感じるのである。
同じ局で『5→9~私に恋したお坊さん~』はギリギリ2桁をキープしているが、女性の深層心理に存在するシンデレラ症候群をくすぐる原作の力によるものだろう。2005年にTBSで高視聴率をキープした『花より男子』のそそられ方と同じ理由だと思う。いい歳して隠れファンだった私は、『花より男子F(ファイナル)』の映画まで観に行ってしまったが、同じ井上真央が主演を張っているNHK『花燃ゆ』は観るに耐えられない。主人公が実存の人物であっても台詞が説教くさくて、脚本家の上から目線といおうか優等生ぶりにムカついてしまう。
メディアの選択肢が増え、若者のテレビ離れに歯止めが利かない。しかし街の書店が減ってデジタル書店が増えても、小説やマンガといったコンテンツが衰えずにいるのは、人間が質の良い感動を求める生き物だからだと思う。人気俳優やお笑い芸人さえ出しておけば視聴率が取れる時代は終わった。テレビ局には、視聴者の頭脳や心を甘くみない作品作りをしてほしいと願っている。
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