逗子市小坪の一日がくれた日向のにおいと昔の自分

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逗子市小坪は葉山マリーナに隣接した、昔ながらの漁港。JR逗子駅とJR鎌倉駅との中間にあり、寂れた商店街では小さなスーパーマーケットさえ閉店し、芸能人がくることで有名だったイタリアンの名店「ピッコソヴァーゾ」も閉店してしまった。それでも地魚を安く売る店には、週末になると観光客の列ができる。

逗子市小坪

「美味しい魚が食べたい」と、東京から遊びに来た友人を案内して、日曜日は家の近所を歩き回った。小坪のゆうき食堂で列に並び、クロダイ、シメサバ、アジ、カツオ、生シラスを注文してビールで乾杯。「ゆり子、久しぶりじゃん」とタメ口をきく女将に、追加のウーロンハイを頼む。家飲みは止めて、仕事のあとの懇親会でしかアルコールは飲まないことにしているけれど、ゆうき食堂での昼飲みは昔に戻った気分だった。

漁師やご近所さんが集まったからと言っては呼び出され、頭がぐるんぐるんするほど飲んだのは、恵比寿から逗子に引っ越してきた当時。その足で立ち飲み屋や居酒屋をはしごして、恵比寿ガーデンプレイスに住んでいたスノッブなお姉さんは、二重アゴでお腹がポコリンと肥ったおばさんになった。

釣り船に空きができた時は乗せてもらい、ブリに近いサイズのワラサを釣って、よーし!今夜も飲んでやるぞと意気込んでいた頃の写真がこれである。

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その後、二股をかけられていた男に大失恋したことで禁酒。キレイになって見返してやる!の執念が体たらくな生活に歯止めをかけた。単にアルコールを止めただけなのに半年で8kgも痩せた快挙が嬉しくて、書き始めたのがファッションブログ「歳を隠すのをやめました」。モデルの仕事まで舞い込んできたのだから、何が幸いするか分からないものだ。

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取っかえ引っかえコーディネートした写真をアップして、毎日記事を書き続けたブログは今や1,130記事にもなった。ストイックな暮らしを抜けて、そろそろ幸せになってもいいかなと結婚したら、相手が家に転がり込んできた上に認知症になって3カ月で離婚。しかもSNSで面白おかしく後妻業と拡散されたダブルパンチを喰らい、お正月からずっとヒッキーになっていたのである。

小説みたいな人生だと我ながら思う。後妻業と言われる逗子からは引っ越そうと思い、相談を持ち掛けていた友人が遊びに来て、ゆうき食堂でのランチに至った。こんなに食べて飲んだらデブになると危機感を抱きつつ、振出しに戻った自分に笑ってしまった。心は若返っていく。

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小坪漁港で釣りをしている家族連れの釣果を覗いた後、あのてっぺんまで登ってみない?と披露山を指差す。途中にあった古井戸で喉を潤し、急な坂道と階段を上り、披露山の先端にある大崎公園に辿り着いた。

日曜日でもここは観光客がほとんど来ないので、展望台のベンチを占領して昼寝ができる。ごろんと気持ちよく転がっていたら、「あれっ!」という声が聞こえた。

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目を開けると前に立っているのは、離婚した亭主の友人。「あいつは得体がしれない男だから、無視したほうがいい」と言われていた人だけど、得体がしれないのは詐欺師らしき亭主のほうだった。

千載一遇。まさかこんな場所でバッタリ会うなんて、神様がくれたチャンス? 事の顛末を全て話したことで、胸のつかえがスーッと落ちたのである。彼はお客のフランス人、私も東京の友人を連れていたけれど、和んだ会話に長閑な午後が過ぎていった。

その後も元気よく、逗子海岸までのハイキングコースを下り、お日さまの匂いを身体中につけて帰宅した。脱いだパーカに鼻を寄せると、日向くさい(ひなたくさい)。小学校低学年の子どもたちがいる教室と同じにおいだ。

子どもみたいにリフレッシュした自分を連れて、次は16回目の引越しをしよう。「赤いやねの家|15回引っ越したマイホームブログ」には、おまけの未来がプラスされることになりそうだ。残りものには福がありますように。

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