彼女に恋したティーンエイジ

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コーラス部にいた中学生の頃、練習に使っていた音楽教室は木造校舎の2階にあった。
窓の下は相模湾に流れ込む境川。新学期の始まりと共に桜のシーズンは終わりかけだったけれど、パラパラと花びらを散らす木々を見下ろしながら、二部合唱で歌った滝廉太郎の『花』が耳に残っている。

放課後になると、誰彼ともなく集まるピアノの前。
発声練習が始まるまでの時間、力強いタッチでベートーベンの『悲愴』を弾く先輩が、私にとっては初恋の対象だった。

通っていたのは小中高一貫の女子校。宝塚ってわけじゃないが、中学生が高校のボーイッシュな先輩に憧れるのは稀なことではなく、「○○さんってステキ!」と各々のお気に入りを噂しあったりしたものだ。
ひそかに調べた誕生日には、校門の前でプレゼントを持って待ち構えていたり、体育祭ではカメラを持って追いかけたり、恋に恋することが楽しかったのだと思う。

偶然2人きりになった音楽教室。
映画『ウエストサイド・ストーリー』を見てきた先輩が、私の顔を覗き込んで髪を触った。
「あなたマリアに似てるね」。ヒロインのナタリー・ウッドがどんな顔かは知らなかったけれど、100回も200回もその日のシーンは心にリフレインした。

やがて彼女が高校を卒業する送別会。目と目で挨拶しただけで私の初恋は終わる。
満開の桜をバックに撮った記念写真だけが宝物になった。

桜

それから数年後に信じられない偶然が起きた。
1ヵ月後に結婚式を控えた春の日、婚約者に送られてマンションに帰ってきた時のこと。
エレベーターホールでバッタリ出会ったのは、憧れのあの先輩だった。同じ建物に住んでいたなんて! ご主人と寄り添い、大きくなったお腹を抱えて目を丸くしている。

ほとんど言葉を交わさず軽く会釈して、それぞれのパートナーと腕を組む。
もしかしたらあの頃、片思いでなく両想いだったのかもしれないな。
それきり二度と会うことはなかったけれど、ほんのりとした確信が咲いて散った夜だった。

コメント

  1. 素浪人 より:

    エスとかシスターとか言う世界ですかね?
    いい思い出でじゃないですか、人に恋したなんて。
    拙者にも苦い思い出があります。できたら死ぬ前には謝りたいと願っていますが・・・。
    でも今は無性に「恋」したい! 今日この頃でごわす。

    屋久杉は元気ですか?

  2. yuris22 より:

    恋は生きることの推進力になります。
    特に片思いの進行中ほど、明日の偶然が待ち遠しい。
    願いが叶う瞬間は一生消えない幸せな記憶になるでしょう。
    屋久杉には今朝の飛行機で会いに行きます。
    どんな春が訪れているか楽しみ(^-^)

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