「派遣切れ」の言葉が及ぼす影響

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派遣切りの暗いニュースが毎日報道される中で、特に気になる事件が目に付いた。

・<放火容疑>「派遣切られむしゃくしゃ」26歳男逮捕 埼玉

昨年12月に自動車工場から派遣切りされ、1月中旬には寮を追い出された26才の男。神社の拝殿で寝ようとしたが鍵がかかって入れず、腹が立って放火したという。前夜にネットカフェで過ごした後の所持金は20円しかなく、放火後に公衆電話に自ら通報したため、逮捕の際には5円玉2つしか持っていなかった。
(2月3日21時14分配信 毎日新聞)

・派遣切られ「強盗して逮捕されれば食料困らぬ」男逮捕 北九州市

昨年10月末に三重県内の精密機器製造会社から派遣切りされ、その後は大阪府内の工事現場で働くなどした35歳の男。12月には故郷に帰って駅周辺で野宿していたが、ゴミ捨て場で拾った包丁を保持し、「強盗しようとしたが怖くなった」と自分で110番通報した。逮捕時の所持金は11円。逮捕されれば寝る場所と食べ物に困らないと思った」と話しているという。
(2月4日1時43分配信 朝日新聞)

ネットの掲示板やブログでは、本気になれば働く場所はあるだろうとか、だらしないクズだとか、ここまで追いやった政治が悪い等々、コメントは様々である。
しかし私が気になるのは、連日のようにマスコミが「派遣切り」と標題を掲げることだ。

大不況が表面化する以前から、寝食に困って犯罪を起すホームレスは沢山いた。素性のわからない彼らは、以前は正社員雇用されていたかもしれないし、ともすれば経営者だったかもしれない。その実態はたまにドキュメンタリー番組で報道される程度だった。

ところが今や「派遣切り」が頭につけば視聴者が注目するニュースとなり、視聴率が上がる。言い方は悪いがこのまま行けば、今年の流行語大賞になるのでは?と思うほど巷に溢れかえった言葉となった。

景気への悲観論が広まり、政府や企業に対する憎悪が深まる中で、マスコミが最も行っていけないのは心理誘導や煽りだと思う。留置所に入れば寝食が得られるのかと、次に続く犯罪者が増加する可能性だってある。「派遣切れ」イコール危険人物のレッテルが貼られ、彼らの就職活動はますます難しくなるかもしれない。

日本は言霊(ことだま)の国。良い言葉を発するとよいことが起こり、悪い言葉を発すると凶事がおこるとされてきた。未来を暗から明に方向転換させるためには、言葉の使い手のプロたちが意識を変えることが大切なのではないだろうか。

コメント

  1. 素浪人 より:

    不思議な言葉=「百年に一度の大恐慌・大不況」?

    前回の世界恐慌は1929年(米国の株暴落は1907年=百年か)
    また、日本の終戦は1945年。
    64年前に日本がどうだったのか? 今の経済が終戦直後ほどひどいのか???

    今は経済そのものより、「人間の考え方」の問題ではないかなぁ、だから「言葉」が大事だと感じます。

  2. T・O より:

    ほんとうにそのとおりだと思います。報道番組等でも今苦労されてる人達に応援の意味を込めたコメントを贈れないのかと思います。 ほんの数秒難しくはないはずですよね。

  3. yuris22 より:

    素浪人様

    成功哲学のベストセラー「ザ・シークレット」からの引用です。

    「自分に欠けているものや不足しているものに意識を向け、そのことを家族に対して騒ぎ立てたり、友人たちとその話をし、子供たちにまで『私たちには余裕がない、それを買う力がない』などと言うと、決してそれを実現する経済力は持てません。それは、お金がないという状況を自分で引き寄せているからです。もしも豊かになることを望み、繁栄することを期待するのであれば、豊かな状態に焦点を合わせてください。豊かさに焦点を合わせるのです」(リーサ・ニコルズ)

    まさに人間の考え方と言葉が引き起こす状態が書かれています。現在の不況がここまで広がったのは、不安を掻き立てる言葉の伝染によるものかもしれませんね。
    「できない」ではなく「できる」の発想を唱える人たちが、もっとマスコミに登場して欲しいと思っています。

  4. yuris22 より:

    T・O様

    昨夜のニュース。仕事のない人たちに無料でラーメンを支給する大阪(だったかな)のラーメン屋さんが出ていました。店主もホームレスだった時代があったので、今こそ困っている人たちを助けたいという一心で始めたのだそうです。
    こうした奉仕をしている方々はもっと沢山いるはず。総理大臣が煮え切らない答弁をしている間に、どれだけの人たちが前線で頑張っていることでしょう。マスコミはそんな応援団たちの言葉を拾って欲しいと思います。

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