曖昧な政府の口先介入

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円高が進み、経済不安が悪化の一途を辿っている。今朝も4営業日続落で取引を開始した東京株式市場は、心理的な「節目」とされる9000円を割り込んだまま。今年の夏はまだまだ猛暑が続くというのに、デフレの経済界はまるで秋の終わりみたいな寂寞とした風が吹いている。

急激な円高が続いている為替市場に国が介入するかどうか。野田財務省は24日の会見で「コメントしない」と明言を避け、今朝の会見では「重大な関心を持って、極めて注意深く見守っていきたい。必要な時には適切な措置を取る」と口先介入をしただけ。具体策を得られなかった市場は案の定、午前終値が8900円を割り込んでいる。

市場心理は言葉に対してナーバスだ。野田財務省の逃げ腰な一言は、長雨で脆くなった地盤への最後の一滴となる。崖崩れで埋もれた土砂の下には、破産する投資家、倒産する企業、失望して消えていく命。一刻を争う状況を「極めて注意深く見守っていきたい」と、高みの見物みたいな常套句はいったい何処から出てくるのだろう。

バブル景気真っ盛りの頃、私の父は本業そっちのけで朝から夕まで短波ラジオを聴き、株の売買に没頭していた。毎日マンションが1軒買えるほど儲かった時期もあったが、まさかのバブル崩壊と共に坂道を転がり落ちる日々。死にたいと何度も口にした。

日経平均株価は1989年の大納会で38915.87円を付けたのをピークに、2001年には1万円割れ。株券は追証で抱えた借金の担保になり、脳卒中で倒れるまでの10年間は、利息を返すためだけに働いていたかもしれない。老人ホームのベッドで介護される今になっても、「今日の株は幾らだ?」と真顔で尋ねる顔を見ると、マネーゲームが父の心まで食い尽くしてしまったのだと悲しくなる。

行き過ぎた資本主義は、犠牲者なしにはもう後戻りできない。国民たちは次は自分の番かと戦々恐々としながら、それでも政府・日銀が9回裏で1発逆転打を放つ奇跡を待っている。

菅首相は「経済対策は経済界から話を聞いて検討したい」と、経済3団体トップとの会談を今日予定している。誰の提案だか、まさに泥縄、他人任せ。国民の期待を知っているなら、保身を捨てて勇気を出して、本当は思っている一言を声に出せばいいのだ。

常套句には、字面が存在するだけで内面がない。ぶれ続けている内閣を表す今年の言葉には「曖昧(あいまい)」がお似合いである。

コメント

  1. muha より:

    せんせい こんばんは。「管」でなく「菅」首相。カイワレ…O-157に御注意下さいね。

  2. yuris22 より:

    muha様

    あらら、入力ミスでした。
    そういえばカイワレ問題の時も、曖昧な見解を発して、農家や業者の倒産を招きましたね。訴えられて国が敗訴したように記憶しています。総理大臣になって本当に大丈夫なんだろうか・・。

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