梅雨の花と理科室と教卓と

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ポストへ手紙を入れに行った帰り道、民家の軒先にムラサキツユクサを見つけた。懐かしくて思わず写真を撮る。中学校の理科だったか、ムラサキツユクサの薄皮をスライドガラスに載せて、顕微鏡で細胞や葉緑体を観察したことを覚えている。スケッチした図が何の役に立つのやら、青臭い匂いだけが鼻についた授業だったが、梅雨時に咲く花は子どもの頃の思い出を連れてくる。

ムラサキツユクサ
小学生のとき、押し花を作ろうという4時間目の授業で、私が選んだのはドクダミの花。白い苞葉が可愛らしくて、摘んできた1本をノートの間に挟んで重しを乗せた。ギュウギュウと手で押しているうちに、なんだか気持ちが悪くなってくる。青臭さを通り越した悪臭が身体に染みついて、その後の給食は全く喉を通らなかった。

ドクダミ
アジサイは家の庭に咲いていた。黒板当番の朝、教卓に飾ろうと手折っていった花が、お昼前には頭が垂れ下がってくる。切り花の水揚げなんていう方法を知らず、先生の顔よりも黒板の文字よりも、花瓶のアジサイばかり眺めていた一日だった。

紫陽花
そして私の名前と同じ「ゆり」の花。いつも呼ばれて最も身近な花なのだけれど、名付け親の祖父はなぜこの名を選んだのか、理由を教えてくれないまま空へ旅立ってしまった。好解釈で「歩く姿はユリの花」を主張する私を、友人たちは「鬼ユリ」だの「鉄砲ユリ」だのとせせら笑う。確かに私の性格からすれば友人たちは的を得ていたような・・。

ユリ
理科室の顕微鏡、給食前の4時間目、黒板と教卓、友人たちの笑い声・・。この季節がくるたび思い出して、カメラを向ける梅雨の花たちあれこれ。撮った写真には写ってないけれど、あの時の子どもはいつでも私の中にいる。

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