嵐のあとのポプラと青空

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午前3時に原稿書きを終えて、遅い夕食をとった。ちょっとだけ食べたのに胃がもたれて眠れず、頭が働かない朝だ。

新宿のヤマハ作編曲教室に通っていた頃、写譜のアルバイトをしていた友人が徹夜明けに言った言葉を思い出す。
「歯が浮くってこういう事だったんだ。」
当時、高校3年だった私には全く意味がわからなかったが、今の年齢になれば歯が浮くだけでなく、肩凝り、腰痛、ドライアイ等々、身体じゅうにガタがくる。

それでも根を詰めると飲み食いを忘れて没頭する性格は昔から変わらず、夕べの暴風と大雨も我れ関せずだった。逗子市の防災無線からは警戒を呼び掛けるアナウンスが流れ、ベランダの植木鉢たちが引っくり返るかもしれないのに、これだけ終えたら様子を見に行こうとパソコンに向かっていると、あっという間に数時間が過ぎてしまう。

やがて音ひとつない静寂。いつの間にやら外は風雨が止んで、足下のホットカーペットに避難していた与六が「もう大丈夫だニャン」と大きな伸びをしている。原稿も上がり、肩をボンポンと叩きながら達成感にひたるのは至福のとき。あながち徹夜が嫌いではないのも、セーターを編み続けて朝を迎えたティーンエイジの頃と変わらない。

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コーヒーを飲み、スーツに着替えて東京に出掛ける時間。外に出るとポプラの木が裸ん坊になって、かろうじて枝先に数枚の葉が付いている。

最後の一葉まで、まだまだ私も頑張れるかな。オー・ヘンリーの短編小説を思い出しながら、青空に向かい深呼吸した。雨上がりの空気は軟らかく、お疲れ様と包んでくれる透明なブランケットのようである。

コメント

  1. とら より:

    まだまだまだまだ!頑張って下さい。空気、を纏ったブログ、ますます貴重になります。

  2. yuris22 より:

    とら様

    いつも読んで戴いてありがとうございます。
    進化の早い時代に、私はもう用済みなのかなと思ったりしておりました。でも支えて下さるコメントで元気復活です。心の隙間に入る文章を綴っていきたいと思います。

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