付き合い下手からWin-Winへ

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人間はコミュニティーを作って生活する動物である。しかし私の場合、周りの人たちと足並みを揃えることが苦手だ。上辺では協調性を取り繕うことができても、素の自分は一匹狼タイプ。誰にも邪魔されない部屋で独り黙々と仕事をするのが性に合っているため、皆で机を並べての会社勤めは向いていない。

文章書きと並行して、WEB制作の会社を始めたのも上記の理由。固定費のかかるオフィスの設置や正社員雇用はせずに、IT技術者やデザイナーとサテライトオフィスで繋がっている。プロデューサーとして請け負ったプロジェクトごとにチームの人数を決め、殆どの打ち合わせはメールとスカイプ、急ぐときは電話。コミュニケーションツールを駆使して、なるべくなら顔を合わせずに済むよう、この仕事を選んだとも言える。

制作費によっては自分一人で片付けることもしばしば。誰かに発注して出来栄えが良くなかった場合、ダメ出しをするのに神経を使うし、何度も修正を依頼して嫌われたくない。飲んで騒ぐときは幾ら大人数でもウェルカムなのに、仕事では心から信用できる少数のスタッフとしか付き合えない臆病者なのである。

この性格はどこから来たのか、始まりは小学生時代だと思う。スポーツでも勉強でも劣っているのは嫌で、がむしゃらに努力した。歯を食いしばって頑張って、他人より抜きん出た途端に訪れるのは一人ぼっち。誰も一緒に遊んでくれないのに全員一致で学級委員に選ばれるという、孤高の仲間外れが待っていたのである。

それ以後「偉そうにして」と思われるのが怖くて、他人の顔色を伺う子どもになってしまった。相手が不機嫌なのは私のせいかもしれないと、おだてたり笑いを取ったりの卑屈さが常に付きまとう。人との距離の取り方が分からないまま、仲間外れのトラウマは大人になっても消えず、一匹狼で自分を守ってきたのだと思う。

そんな人生のスタンスに近ごろ変化が訪れた。これまで上司などいたことのない私に、ボランティア団体で人の動かし方を教えてくれる大先輩ができた。商社マンとして培ってきた経験をベースにしたWin-Winの交渉術を目の当たりに見せてくれる。
「押した後にまた強力にプッシュしたら駄目だ。さっと後ろに引いて、相手が近寄ってくるのを待つんだよ。そこでやんわりと押して、実のある交渉が始まるんだ。」
どんな険悪な状況でも謙虚さと礼儀を忘れない、絶対に相手を傷つけない誠意があれば、Win-Winで物事は進んでいくという。

大先輩の手腕を「見て覚えろ」で学習しながら、トラウマを克服していく自分に驚くこの頃。これぞ実践的な認知行動療法だ。バリケードをぶち壊して、来年は群れの中に溶け込んでいけるかな。自分の器を拡大する一年でありたいと願う年増の小僧である。

追記:
アベノミクスはバブルの再来なのか。特に宣伝活動はせず、戴いた仕事にベストを尽くしてアフターフォローし続けていただけなのに、手に終えないほど受注が増えてきた。
私の顔を見ただけで「お願いしたいんですが」と声がかかるのは、まるでクリスマス映画のように、この世にいない方の不思議な力が働いているのだろうか。

そんな一方で小学生時代を彷彿とさせる嫌がらせがSNSであった。でも平気なので放置。一寸先は見えなくても、彼らの数年先は想像がつくし、子賢しい人物が天罰を受けるのは世の習いである。

天命というのか、私は囲まれた輪の真ん中で、ポツリ一点孤立した存在。ただし織田信長と違うのは、ポツリでありながらも他のポツリたちと組んで輪を作ること。

経営者たちの大きなネットワークに参加してから、小僧の私は教えられ助けられ叱られてきた。辛くてもお世話になりますと笑顔を欠かさずにいれば、大きな輪は暖かく優しく、両手を繋いできてくれるのだ。

私には私の場所がある。八方美人になって、おどおど顔色を見るのをやめなきゃね。
どんな仲間外れに合おうと、憎むべきその人たちの家族、国民を幸せにしたリーダーは歴史的に存在する。そんな勇者の足元に近づけるよう、自らをダウンサイズするのはもう止めた。明日はもっとよい日だ。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    この年の漢字は「輪」だそうですね。
    大輪の軸になる修行ですね。

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