まだ5時前なのに、厚手のセーターの袖からひんやりとした夜気が忍び込んでくる。
何かの気配がして足を止めた。それは色づき始めたポプラの木。
誰も座らないガーデンチェアを、退屈そうに見おろしている。
風が吹き、大きな枯葉がカサコソと転がっていく音だけが、彼女の唯一のお喋り。
少し離れてポプラを見上げる。
誰もいない夜中には、回れ右して歩き出しそうな幹。
細くて長い腕を、灯りがともりはじめた町に向けてエロティックに伸ばしている。
16世紀のスペインの作曲家、ホアン・バスケスの歌を思い出した。
“De losalamos vengo,madre”、邦題では「ポプラの林に行ってきたよ」とか「ポプラの木まで行って来ました、お母さん」。
スペイン語の歌詞と共に英語の歌詞もあるけれど、日本語訳を頼まれた私としては至難のわざ。
単純な歌詞が何度も繰り返されるのを、どんなストーリーにしたらいいのか、メロディの音符を埋めるのに苦労した。
この詞を書いたときから、ポプラは女性のイメージ。
少年を誘惑するニンフの化身かと、こっそり信じている。
De losalamos vengo,madre(I have been by the poplars,mother)
I have been by the poplars,mother.
I’ve seen how their branches swayed in the breezes.
By the poplar trees of Sevilla,
I have seen my beautiful lover.
(訳詞)
大きく息をはずませて あの子が帰ってきた
ねえママ きょうはステキな友だちを見つけたよ
とても背高のっぽで
緑色した髪を 揺らして見せてくれたよ
風のかたちを僕に
伸ばしたその腕に 休む小鳥たち
夕陽のベールをかぶって とてもきれいだったよ
あしたママも行こうね ぼくのポプラ並木に
Copyright by Yuriko Oda
コメント
ギリシャ神話でポプラは・・・
太陽神・ヘリオスの息子であるパエトンの死を
嘆き悲しんだ妹たちが泣きくれているうちに、
ポプラの木に姿を変えてしまったという話が綴られています。
そして彼女たちが流した涙は琥珀になったといわれています。
だから、ポプラは今でも琥珀色の樹液の涙を流しているのだと・・・・・
703様
ポプラにはそんな神話があったのですね。
樹木の形のせいなのでしょうか、人間が姿を変えたように見えるのです。
琥珀色の樹液、まるでトパーズのようですね。
そういえばトパーズは11月の誕生石でしたっけ。
確かにトパーズは11月の誕生石ですよね。
yurisさんは11月生まれなのですか?
ちなみに琥珀Amberのパワーストーン効果は、
http://www.kaiun-navi.jp/navi/powerstone/amber.html
トパーズはhttp://www.kaiun-navi.jp/navi/powerstone/topaz.html
703様
私は12月生まれなので、トルコ石なのです。
誕生石とは言えどあの色は苦手で、トパーズの大人の色に憧れます。
yuris様は・・・
十分に素敵な大人の女性ですよ。