人気運で二日酔い

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一日続いた雨が上がり、湿った傘を広げて乾かす。窓から差し込む日差しはぽかぽかと暖かいのに、二日酔いでどんより気分の私。飲むつもりじゃないのに飲んじゃったのは、昨日の人気運による。

一仕事終えた夕方、ポストに郵便を入れに行こうと階段を下りていくと、薄暗くなったカーブに猫が一匹。1月8日の日記『野良猫と素浪人の関係』に書いた、にゃんこセンセイだ。
家ではなく道路に居ついた変わり者の野良猫なのだが、たいていは昼間の暖かい時間にごろごろしているのが、昨日は冷たい雨に濡れてびっしょり。近寄ると鳴き声で何かを訴える。抱き上げようとすれば逃げるし、離れればニャーニャー。雨をしのげるように植栽の中に追いやって、餌でも買おうとコンビニに行くことにした。

次に引っかかったのはバス停。腰の曲がったお婆さんが、雨に濡れて立っている。思わず傘に入れてあげると「助かります」と感謝されることしきり。長時間待っていたのだろう、髪がぐっしょり濡れているので、体調は大丈夫だろうかと心配になる。
買い物は逗子駅のスーパーでもいいやと、乗るつもりのなかったバスに一緒に乗ってしまった。

彼女が無事に座ったのを見届けて最前列のシートに座ると、後ろの席にはまた新たなお婆さん。消え入りそうに小さな声で「なぎさ通りはどこですか?」と聞いてくる。
次のバス停だったのでボタンを押してあげたら、どうして降りていいか判らない様子でボーッとしたまま。お節介な私は一緒にステップを降りて、歩いて逗子駅まで行くことにした。

そしてまた引っかかったのは立飲み屋の三遊亭。外に顔を出していた常連客に呼び止められ、赤ワインを1杯だけと中に入る。雑談をしているうちに2杯が3杯、めったに会わない友人がひょこっと顔を出し、携帯には別の友人から「飲みに行こう」のメール、留守電にはまた別の友人から「どこそこで飲んでる」とのメッセージが入っている。ああもう帰れない・・。

これを人気運と言わずして何と言おうか。猫と人に振り回された不思議な夜だった。写真は晴れた日に撮った、にゃんこセンセイです。

にゃんこセンセイ1
にゃんこセンセイ2

コメント

  1. 風小僧 より:

    招き猫だったのでしょうかね。
    良い友ばかりのようですから、良い友を招く猫という事になりますね。
    お婆さんとの暫くの時間も、yurisさんの優しさがうかがわれます。
    「人情という名の車中」でしょうか。
    「清らかな雨」とも言えますが、12月の寒さの中にあって、大切なぬくもりの記事を読ませて頂きました。

  2. yuris22 より:

    風小僧様

    現代版「わらしべ長者」みたいな展開でした。おとぎ話の主人公は最後に大金持ちになりますが、私の場合はもっと素晴らしいものを得ました。沢山の愛です。
    神様からちょっと早めなクリスマスプレゼントを貰った気分です。

  3. 素浪人 より:

    あァ! 拙者の師範でござる。
    御無事で何より、長い間ご挨拶もぜず失礼したでごわす。でも元気そう。

    >1杯だけと中に入る。
    あ~ぁ 悪魔の囁き・・・いっぱい・・・。

  4. yuris22 より:

    素浪人様

    彼(彼女)はカラスやトンビの攻撃にも負けず、いつものポジションを死守しています。その姿は浪人道の鏡!!
    早く春が来て、暖かな居場所となってくれることを願っています。

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