備前焼を見て心に気付く

広告

まるで雪でもチラつきそうな曇り空。今朝配信されたウェザーニュースによれば、今日は二十四節気の「小雪」だという。歳時記を調べると、「『雪』とあっても山沿地方や北日本以外の地方では、まだ雪が降るに至らない。寒さまだまだ深からず、雪まだ大ならざるの意。すなわち、格別寒くも、また暖かくもなく中ほどの気候である」と書かれている。15日後の「大雪」までに、冬支度を整えておくための期間だろうか。

普段使いの食器も冬支度。ぼってりとした備前焼の肌が恋しくなってくる。釉薬を一切使わない備前焼は、土と鉄のゴツゴツとした茶褐色の地肌が特徴だ。1300度の高温で2週間にわたり焚き続けられる釜の中で、炎の動きや薪の灰のかかり具合によって、焼き色と模様が変わる。熟練した作家は焼き上がりをイメージして釜に入れるというが、炎の中で起きる変化は自然の力に委ねるのみ。一つとして同じ模様になることはない。

備前焼

備前焼

家にある備前焼は本山和泉先生という作家から購入したもの。壷や食器を裏返すと全てに「心」の印が彫られている。実家にいたころは家族ぐるみで懇意にさせて戴き、誕生日には私の名前入りのコーヒーカップまで贈って下さった。いつか岡山へ遊びに行きますと約束しながら、父が倒れてからは作品を購入することもなくなり、今では手元に幾つか残るだけである。

心の文字

備前焼

使えば使うほど表面の凹凸の角がとれ、落ち着いた味わいになるという、まるで人の一生みたいな器。繊細な気孔が通気性を保ち、お酒はまろやかでコクのある味に、料理は乾かずに新鮮さを保ち、花を生ければ長持ちする魔法の器。

講釈をたれるのは押し付けがましいので、お客様にはさり気なくお出しするけれど、滅多に褒めては貰えない。ましてや裏側に彫られた「心」にまで気付いてくれる人は1人もいなかった。表面は無骨でも、内面は繊細で、人の役に立ちたいと思っている誰かさん。そんな人生を歩んでいる人とめぐり合えたなら、また一緒に買い足していきたい焼き物である。

コメント

  1. 的は逗子の素浪人 より:

    「お好み焼き、ホルモン焼き、たこ焼き、炭焼き」ぐらしか知らぬが、無謀にも立候補致す。

  2. yuris22 より:

    的は逗子の素浪人様

    どうコメントすれば良いものやら、私も焼きが回っております。

  3. より:

    私も本山さんの息子さんの似た器持ってます(笑)
    今はみかんを入れて楽しんでいます

  4. yuris22 より:

    ぷ様

    本山さんの息子さんにはお会いしたことはないのですが、親子で活躍していらっしゃるのですね。果物を入れる器、空けておくと時々、猫が丸くなって入っています(^^;

// この部分にあったコメント表示部分を削除しました
タイトルとURLをコピーしました