電気もガスも使わない都会暮らし

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2カ月間に渡って苦しんだ原稿書きがやっと終わった。来週から次の仕事が始まる前に、山積みになった資料を片付けて、部屋を春モードに切り替えよう。まずは椅子に被せていた電気掛け布団「おひとりさまっと」を洗濯することにした。

ついでにリビングのソファーに敷いたタオルケットを洗おうとしたら、ぬくぬくを好む与六が抵抗する。一日の大半を寝て暮らせる猫が羨ましいにゃ。働かず、お金がかからず、人間関係の煩わしさから解放された暮らしはできないものか。飽食の生活に引き算を取り入れたい。

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一人住まいなのに電気代が月2万円を超える我が家。パソコンに向かって徹夜するワーキングスタイルのせいなのか、改善せねばと思っていた矢先に見たテレビ番組『情熱大陸』に釘づけになった。「電気代月200円、風呂1日おき、食事は干し野菜…元記者の節電生活から学ぶ”暮らしのヒント”」、稲垣えみ子さんというフリーランサーの暮らしぶりが目から鱗だったのである。

28年勤めていた大手新聞社を「肩書から解放されたいから」の理由で退職。都内の古い賃貸マンションに住み、冷蔵庫も洗濯機もないどころか、都市ガスの契約もしていない。肉や魚は家では食べずに、道端で摘んできた野草を天日に干したのをカセットコンロで調理して、おひつに保存したご飯と一緒にいただく。調理に使った水はベランダで育てている野菜に与え、自宅の浴室は使わずに銭湯へ。暖房に関しては「周りを暖めず、自分が温まる」で、湯たんぽや厚着で寒さをしのぐそうだ。

朝は欠かさず近所のカフェに行き、新聞を読んだり執筆活動をしたり。5階の自宅に戻るときもエレベーターは使わずに足を使って上り下りしている。東日本大震災の原発事故を機に取り組んできた節電生活は、アンプラグドと題したコラムで注目された。夫なし、子なし、無職の50歳であることを選んだのは何のため? 日々生きることが冒険で、本当の幸せはどこにあるのかを追及したいのだという。

「どうなるか分かんないですよ、どこかで路頭に迷ってみたいなことが有り得るわけで」と本音を語る稲垣さんの1年後が気になる。私も真似したい、でもその機会が訪れることはないのを知っている。

もし与六がいなかったら、全てを手放して海外の小さな村に引っ越していたかも・・・の「もしも」は有り得ない。飼い主に頼るしか術のない小さな命の頭を撫でながら、とりあえずはこの子を守るために頑張るのが、今の私の人生だ。

次に生まれ変わったときは絶対に猫になって、一生面倒見てくれる人を探すからね。ベランダに干していた掛け布団を取りこんだら、すかさず与六がピョーン。ゴロンゴロンと転がって幸せそうに目を細めた。

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