土曜日の午後、逗子文化プラザホールで開かれた「大学落語鑑賞会」に出かけた。出演者は青山大学、中央大学、明治大学、慶応義塾大学のオチ研で、入場料1,000円のチャリティー寄席だ。私は開始時刻より1時間半も遅れて行ったのだが、どうせアマチュア芸だろうと馬鹿にしていた自分を恥じた。
学生たちは金屏風をバックにひょろりとした身体付き。風が吹けば飛びそうな存在感であるが、今どきの話題を盛り込んだ「枕」が始まると、滑舌(かつぜつ)もしっかりと堂に入っている。演目は地元の商店名や名産品を織り込んだオリジナル落語や、ライオンの動きを真似たパフォーマンス落語(「動物園」)、艶っぽい「お花半七馴れ初め」など、寄席に行ったことのない私にはどれも新鮮だ。オペラと同様に、日本の古典芸能である落語を好きになるかどうかは、初めての体験が大事なのだと納得した。
ところが会場の熱気は今ひとつ。午前の部で逗子・葉山の小中高の学生を無料招待したからか、午後の部の客席は8割がお年寄りなのだ。逗子市の現状は、人口60,555人に対して65歳以上が16,016人。4人に1人が高齢者という街である。彼らを支えるためにも今誰より、笑ってストレス解消して欲しいのは20~40歳の働き盛りたち。その世代が殆ど会場にいなかったのは淋しい限りであった。
午後5時前に終了して、会場の外に出れば人影はパラパラ。2月は「逃げ月」というけれど、今年は例年にないほど通りに活気がない。地域の文化振興に欠かせないのは「箱」でなくて「人」である。マフラーに顔を埋めて歩きながら、この街に笑いをもっと、若さをもっとと願う夕暮れであった。
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