マンション住まいの楽な点は、庭の雑草抜きをしなくて済むことだが、ポカポカと幸せな小春日和には実家の庭が懐かしい。池に散る紅葉、蕾を膨らませた山茶花、緑が深まるツゲの生垣・・、冬が近づいているのを植木たちの変化が教えてくれた。
今月14日(日)まで、鎌倉界隈の造園家たちが創作した庭園展示会が、鶴岡八幡宮の流鏑馬馬場道で開かれている。約3メートル四方に区切られた11個の敷地には、それぞれアイデアをこらした庭園が造られ、時折カーンと響く鹿威しの音が耳に清々しい。
竹の垣根を屏風に見立て、石像を配置した「六曲一双の屏風の庭」。手前に相模湾と亀、奥に箱根の山々と鶴を置いた枯山水の「鎌倉五山」。雪ノ下界隈を散策すればきっとお屋敷の奥にありそうな「古き鎌倉の庭」。どれも心に静寂のひとときを与えてくれる。
鎌倉造園界大賞・技術賞を受賞したのは「涼」という茶庭。
アイデア賞を受賞したのは「Jardin PoTAGSer鎌倉風」。よく見ると何種類ものハーブや野菜が可愛く植わり、エコロジー時代にマッチした家庭菜園風だ。
今回案内して頂いた植木屋さんの作品は「水鏡」。脇に解説文が添えられている。
「池は宗教的にも彼岸に対しての境界と考えられていました。
大胆な石組池に後ろの垣根(桂垣)の直線美、木々の優しい枝を水面に映し出してみました。右上の花は遊び心で花菖蒲を表現してみました。
この水景を眺め心の中を見直しては・・」
本来は水の下に黒御影石を敷くところを、コストダウンのために黒いビニール袋の上にガラス板を敷くというアイデア。池の中に生まれたもう一つの風景の中を、舞い落ちた枯葉が旅をしている。
こんな癒しの庭園が幾つもあって欲しい古都鎌倉も、高い相続税のせいでお屋敷は売られ、細切れになった土地にアパートが建っていく。猫の額ほどの庭となっては、植木鉢を並べるのが精いっぱいだろう。竹の垣根も近づいて見ればプラスチック。きびきびと鋏の音をたてる庭木職人たちの姿も減っていく。
消えていく日本文化を守るのはお年寄りではなく、これからの若い世代。志高く、手に職を持つ後継者が増えて欲しいものだと願う秋の日であった。
コメント
自然のものは理に叶っているようで、風水的にも良いようですが、プラスチックは良くないようですね。特に竹は、風水でも重要なアイテムらしいですからね。
とーます様
遠目から見て綺麗すぎる竹垣だったので、近寄った時に唖然としました。節約する部分なら他にもあろうに、なぜプラスチックの垣根なのかなあと(しかも鎌倉で)。風化していくものの美しさを知っている人は少なくなるのでしょうね。