人間関係学科に属していた大学時代、主にノンバーバル(非言語)コミュニケーションの研究をしていた。
電車で向かい側に座った人に何秒ぐらい視線を飛ばせば優位に立てるとか、老若男女によって喜怒哀楽の表情を読み取る力がどう違うとか、被験者を使ってデータを取る。果たしてそれが社会に出て役立つのか疑問であったが、商談をする今となればもっと勉強しておけば良かったと思っている。
コミュニケーションにおける最もインパクトのある要素はボディランゲージであり、中でも視線が大切だという。アメリカでは話をするときに目を見ないと、「嘘をついている」とか「自信がない」と思われるので、相手が目をそらすくらいにしっかり見つめるのが重要らしい。それは1対1であっても、多くの聴衆相手であっても必ず誰か1人の目を見る。プレゼン技術を磨く講習会が3日間コースとすると、そのうち1日はアイコンタクトの練習に当てるそうだ。
しかしシャイな日本人にとっては不慣れな習慣。目を見なくちゃという意識は時にぎこちなくなり、いつ視線を逸らせばいいのかタイミングをはかるのが難しい。正面に向かい合った時は、鼻とか眉間とかネクタイの結び目あたりを見ていて、話のポイントの時だけ目を戻せばいいという意見もある。
そこで裏技として利用したいのが「情動感染」。人は相手の表情や声の出し方、姿勢を真似る傾向があるという心理学用語である。例えば、一緒に遊んでいた幼児が泣き出せば、別の幼児もつられて泣き出す共感の法則だ。
これをビジネスに利用して、相手が微笑めばこちらも微笑む、身体を前に乗り出せばこちらも乗り出してみよう。鏡を見るように相手を真似ると、緊張を解いて共感を得ることができる。なぜなら人は自分と似ている人を好きになる傾向があるからだ。
とりあえずは配偶者や恋人を実験台に練習してみてはどうか。ただし、睨んだら睨み返す、罵声に罵声を返すは「売り言葉に買い言葉」で大喧嘩に発展するので注意。喜怒哀楽の「怒」だけは実験しないで下さいね。
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