カネボウ化粧品の美白コスメにより肌がまだらに白くなる「白斑」の被害報告が相次いでいる。7月23日時点で、被害を申し出た6,808人のうち2,250人が重い症状を訴えているそうだが、54製品の自主回収を発表した時には使用者が25万人。美しくなりたい女心に幾らの大金が費やされているのだろう。
日本人の美白好きは歴史が古く、「色の白いは七難隠す」という江戸時代の諺があるように、歌舞伎の女形も舞妓さんも顔を真っ白に塗って美を表現している。しかしそれは接客業の化粧で、一般女性は素肌の美しさを引き出すナチュラルメイクにこだわり、顔に塗った白粉も一旦拭き取っていたらしい。
素肌美人が多かった江戸時代に、果たして今のような高級基礎化粧品はあったのだろうか。化粧水だと思っていたヘチマ水は白粉の溶き水だったそうで、主にぬか袋やウグイスのフンで顔をこする程度のお手入れだったという。美しい肌をキープできたのは大豆や魚、地物の野菜、海藻などを常食としていて、良性のたんぱく質とビタミン・ミネラルをたっぷりと摂取していたからなのだ。血液がサラサラで新陳代謝のサイクルが順調であれば、新しく生まれてきた細胞が古い細胞を肌から剥ぎ落としてくれる。美白美容液どころか日焼け止めすらなかった時代の健康的な美容法である。
祖母が96歳で亡くなったとき、お棺で眠っている顔にシミも皺もないのに驚いた記憶がある。海辺の家で一緒に暮らしていた頃、彼女が肌のお手入れをしているのは見たことがなく、真夏に庭の雑草抜きをするのも麦わら帽子を被るだけだった。
その習慣のズボラな部分を受け継いだ私はファンデーションや基礎化粧品に縁がない。冬場は乾燥対策に化粧水を付けるが、夏場は汗をかく度に水でじゃぶじゃぶ洗顔したら終わり。放置して鍛えたおかげか、サラリとした油が自然に出てきて肌に薄い防護膜を作ってくれる。外出時はパウダーをはたいてアイメイクだけすれば完了で、日焼け止めを塗るのは夏場のみ。ケミカルな物は苦手なので帰宅したらすぐに石鹸で洗い流して、すっぴんの心地良さにホッとする。
いま私が暮らしている逗子では真っ黒に日焼けした女性が目立つ。マリンスポーツ三昧で肌が白くなっている暇がないらしいが、50歳を過ぎても短パンで歩ける健康色の素足は恰好いい。黒光りした顔に「シミにならないの?」と聞いたら「もう凄いですよ!」と笑って答え、それでもライフスタイルの優先順位を自然の中で太陽に親しむことに置いているのだ。
美の基準はどこにあるのか、他人に競り勝つための美は限度を知らない。化粧品やエステでは足りず、美容外科でのケミカルピーリング、レーザー治療などに費やしたお金は、一大財産を築ける金額じゃないだろうか。それが本当に理にかなったケアなのか、美に対する自分の価値観はマスコミや化粧品会社に洗脳されていないか、お財布を開く前に冷静になって考えるべきだと思うのである。
コメント
確かに美の基準はどこなんでしょうか?
顔がシミやしわがあって、歳を重ねててもスタイル抜群な女性も沢山居ますね。
宮城県の海辺で推定50近い女性で色黒で肌はお世辞にもキレイではなかったがショーパンからすらりと伸びた美脚には見とれた記憶がある。
女性も男性も顔を見るか体を見るか人それぞれであるが、やはりパッと見目を引き付けるのは抜群のプロポーションなのだろうか?
marie様
同じ太さの二の腕でも、運動で引き締まった筋肉と、たるんだプヨプヨの脂肪とでは美的に大きな差がありますよね。だらしなさが表面化すると老けて見られるのかなと思います。
筋トレとかストレッチとか、毎日コツコツと続ける努力が必要なんでしょうね。